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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「長崎の郵便配達」

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 肌触りの良い映画で、反戦平和のメッセージも頷けるのだが、困ったことに(?)私が本作を観て一番印象に残ったのは長崎の町並みである。前にも書いたが、私は福岡県出身ながら子供の頃から転勤族だった親に連れられて各地を転々としている。長崎市は幼少時に3年あまりを過ごしたが、とても思い出深い地だ。坂の多い港町で、異国情緒があふれていることはよく知られているが、個人的には大らかで開放的な地域性が気に入っていた。特に、古くから異文化との交流が盛んなせいか、排他的な風潮がほとんど無いのが有り難かった。

 この映画は「ローマの休日」のモデルになったと言われるイギリスのタウンゼンド大佐と、長崎で被ばくした少年との交流を中心的なモチーフに設定し、大佐の娘で女優のイザベル・タウンゼンドが家族と一緒に2018年に長崎を訪れ、父親の著書とボイスメモを頼りに父とその少年との思いを追体験するという筋書きで進む。



 監督はドキュメンタリー作品には定評のある川瀬美香で、戦争の惨禍をリアルに強調するような描写は控え、タウンゼンド大佐と少年との関係性を丹念に追っているのは好感が持てる。そして大佐と娘イザベルとの確執を追い込むような方向には作劇を振らせない。イザベルの家族の描き方もあっさりしたものだ。しかしながら、彼女が父親の思慮深い別の面を発見したり、戦時中の出来事を題材にした演劇の監修を引き受けたりと、ドラマとして盛り上がる箇所も網羅されている。

 映し出される長崎の風景はどれも味わい深いが、個人的には昔私が住んでいた地域が出てきたのには感激した。周りの建造物はあれからほとんど建て替わっているが、“そういえば、この道をこう行けばあの通りに出るんだった”とか“この路地を曲がればクラスメートの家に行き着いたものだ”とかいった思い出がよみがえり、何とも甘酸っぱい気分に浸ることが出来た。音楽は橋口亮輔監督の「ぐるりのこと。」(2008年)などで知られる明星/Akeboshiが担当しており、ここでも流麗なスコアを提供している。

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