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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「フォクシー・レディ」

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 (原題:FOXES )80年作品。ハッキリ言って映画の質としては大したことはないのだが、興味深いキャスティングとスタイリッシュな映像で飽きさせずに最後まで見せてしまう。また、青春映画のスタイルが従来(70年代まで)とは変わっていく様態を目撃できるだけでも、観る価値はあるかもしれない。

 南カリフォルニアのサンフェルナンド・バレーに住む16歳のジーニーは、同世代のアニー、マッジ、ディアドルといつも行動を共にしていた。一見屈託無く毎日を過ごしている4人だが、実はそれぞれ家族と折り合いが付かず悩んでおり、家を出て皆で一緒に暮らしたいと思っていた。アニーは重度の麻薬中毒に陥っており、警察官である彼女の父親はアニーを入院させようとする。しかし、彼女は逃亡。ジーニーたちはアニーの行方を探し回り、不良どもと一緒にいた彼女を何とか救出する。だがチンピラグループとの軋轢は続き、パーティ会場での大乱闘に発展してしまう。



 それまでの登場人物を至近距離で捉えたような若者映画とは違い、ストーリーがハードな割には描き方は突き放したようにクールである。一応ジーニーが主人公なのだが、狂言回しの役目しか担っていない。監督はこれがデビュー作であったエイドリアン・ラインで、後に「フラッシュダンス」(83年)や「危険な情事」(87年)などでブレイクを果たす彼も、この頃の演出はぎこちない。登場人物たちから距離を取ろうと腐心しているせいか、盛り上がりに欠けて平板な印象を受ける。ジェラルド・エアーズによる脚本も上等とは言えず、特にアニーの扱いはもう少し工夫した方が良いと思った。

 とはいえ、ライン監督の持ち味である垢抜けた映像表現はここでも印象的で、透き通るように美しい映像と、絶妙な各キャラクターの身のこなしには見入ってしまった。撮影監督のレオン・ビジューとマイケル・セレシンの腕は確かである。ジーニーに扮しているのはジョディ・フォスターで、当時はまだ十代だったが、出てくるだけで絵になる存在感はさすがだ。

 アニー役には「ザ・ランナウェイズ」のヴォーカルだったシェリー・カーリーが担当し、ロックスターのやさぐれた生き方を投影しているようで面白い。サリー・ケラーマンやランディ・クエイドの演技も良いが、この頃は無名だったローラ・ダーンが顔を見せているのも要チェックだ。なお音楽はジョルジオ・モロダーで、さすがの小洒落たサウンドを提供している。

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