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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「レッズ」

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 (原題:REDS)81年作品。本作の特徴というか、一番印象に残る点は、ハリウッド映画で初めてアメリカ国内に実在した左翼勢力を正面から描いたことだ。もちろん、それ以前もその存在や影響力を暗示した作品はあったが、ここまであからさまに取り上げたケースは無かったと思う。さすがハリウッド随一のリベラル派である、ウォーレン・ベイティの手によるシャシンだけのことはある。しかし、肝心の内容は万全とは言い難い。

 第一次大戦中のヨーロッパでは国際労働者同盟の闘争が巻き起こっていたが、オレゴン州ポートランド出身の若手ジャーナリストのジョン・リードはこの動きに触発され、1917年に革命の嵐が吹き荒れるロシアに渡る。そこで彼は自身の体験やウラジーミル・レーニンへのインタビューなどをまとめ「世界を揺るがした10日間」として刊行。一躍注目を浴びる。



 彼と行動を共にしたのは交際相手であるルイーズ・ブライアントで、女権主義者のエマ・ゴールドマンや劇作家ユージン・オニールも彼を支援した。リードは帰国後に米国内の左翼勢力をまとめようとするが、上手くいかない。そこでリードは自身が立ち上げた政党を本家のロシアの革命勢力に公認してもらうため、封鎖中のロシアに潜入する。

 題材に関して大いに思い入れがあったW・ベイティは、綿密な時代考証と見事な舞台セットにより、3時間を超える上映時間も相まって本作に歴史大作としての佇まいを与えている。また、劇中ではリードとルイーズを知る人物のインタビュー映像が幾度も挿入される。その面子は歴史家のウィリアム・ダラントや作家のヘンリー・ミラーにレベッカ・ウェスト、アメリカ自由人権協会創立者のロジャー・ナッシュ・ボールドウィン、画家のアンドリュー・ダスブルクなどで、作劇上では正攻法ではないものの、映画の厚みが増したことは確かだ。

 しかし、この映画は一番大事なことを描いていない。それは、どうして当時アメリカで左傾運動が盛んになり、主人公はなぜそれに共鳴したのか、ほとんど説明されていないからだ。もちろん、こういう映画を観る客層はその頃の社会情勢の概要は承知しており、構造的な背景は想像できるだろう。だが、映画的な興趣としては昇華されていない。リードは最初から左翼の闘志であり、ルイーズをはじめとする周りのメンバーも自らのイデオロギーに一抹の疑念も持っていないように見える。こういう図式的な建て付けでは、求心力は発揮できない。

 主役はベイティ自身だが、熱演だとは思う。ルイーズに扮したダイアン・キートンをはじめ、ジャック・ニコルソン、モーリン・ステイプルトン、ポール・ソルヴィノ、ジーン・ハックマンなど、顔ぶれは豪華。だが、映画の内容自体が斯くの如しなので評価は差し控えたい。なお、スティーヴン・ソンドハイムとデイヴ・グルーシンによる音楽と、ヴィットリオ・ストラーロのカメラによる映像は良かった。

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