去る2022年8月10日夜、北九州市小倉北区魚町にある映画館「小倉昭和館」が、隣接する旦過市場の火災の巻き添えを食らい全焼した。同館は北九州市に唯一残る個人経営の映画館で、福岡県内最古。今では珍しい35ミリフィルムの映写機も稼働していた。配給会社から預かっていたフィルムも焼失したとのことで、実に残念だ。
ただし、注意しなければならないのは、旦過市場はほんの数か月前にも大規模な火災を引き起こしていたことだ。その時の瓦礫撤去の目処も付き、復興の気運が高まっていた矢先である。それにも関わらず、また同じような災害に見舞われたのは、ハッキリ言って学習能力が無い。この地域は昭和30年代に建てられた木造建築物が密集しており、中央の通路を挟み建物が神嶽川の上にせり出して建っている。しかるに災害に対しては脆弱で、99年の丸和スーパーが火元となる大火災をはじめ、近年の水害でも被災家屋が発生している。
北九州市では神嶽川の改修にあわせて旦過市場の再整備のための「旦過地区土地区画整理事業」を2021年に策定しているが、それが実現化する前の災難だった。しかも、今回の火災で大きな被害を受けた新旦過横丁は、この土地区画整理事業のエリアに入っていない。
旦過市場は北九州の台所とも呼ばれ、幅広い層の利用客がいたらしいが、そのセールスポイントはバラエティに富んだ飲食店を含めラインナップが充実していたことと同時に、大正時代に創設されたというノスタルジックな風情だと思われる。しかし、逆にそれが災害に弱い環境に繋がっていたのではないか。そもそも、被災が幾度となく繰り返されてきた過去がありながら、再開発計画が策定されたのはつい最近なのだ。
私は同じ福岡県に住んでいながら、旦過市場には行ったことはなく、当然のことながら「小倉昭和館」にも足を運んだことはない。だが、画像をチェックする限りこの映画館の設備は満足できるものとは言えないようだ。客席は急勾配で、バリアフリー環境とは程遠い。座席自体も広いように見えない。つまりは“昔ながらの街の映画館”である。
こういう劇場の佇まいには郷愁感は覚えても、決してその有り様は現在に通用するものとは思えない。こういう“昔ながらの街の映画館”の多くが淘汰され、シネコンに置き換わったように、このビジネスモデルは古いのだ。35ミリフィルムの映写機や、有名人のサインなどの貴重な資料があるとしても、それは“映画をちゃんと見せる”という本来の映画館の目的とは別物である。
ならば被災後のこの劇場の在り方はどうなのかといえば、まずは当然のことながら、復活はして欲しい。何しろ、新旧取り混ぜたこの映画館の上映ラインナップは映画好きにとっては堪えられないものだ。しかし、それが土地区画整理事業の対象にはなっていない今の土地で営業を再開するのは賛成できない。とにかく、災害に巻き込まれる可能性が小さいエリアに移転するのが最優先事項だ。そして、顧客の立場を十分に考えた設備を整えて欲しい。
ただし、注意しなければならないのは、旦過市場はほんの数か月前にも大規模な火災を引き起こしていたことだ。その時の瓦礫撤去の目処も付き、復興の気運が高まっていた矢先である。それにも関わらず、また同じような災害に見舞われたのは、ハッキリ言って学習能力が無い。この地域は昭和30年代に建てられた木造建築物が密集しており、中央の通路を挟み建物が神嶽川の上にせり出して建っている。しかるに災害に対しては脆弱で、99年の丸和スーパーが火元となる大火災をはじめ、近年の水害でも被災家屋が発生している。
北九州市では神嶽川の改修にあわせて旦過市場の再整備のための「旦過地区土地区画整理事業」を2021年に策定しているが、それが実現化する前の災難だった。しかも、今回の火災で大きな被害を受けた新旦過横丁は、この土地区画整理事業のエリアに入っていない。
旦過市場は北九州の台所とも呼ばれ、幅広い層の利用客がいたらしいが、そのセールスポイントはバラエティに富んだ飲食店を含めラインナップが充実していたことと同時に、大正時代に創設されたというノスタルジックな風情だと思われる。しかし、逆にそれが災害に弱い環境に繋がっていたのではないか。そもそも、被災が幾度となく繰り返されてきた過去がありながら、再開発計画が策定されたのはつい最近なのだ。
私は同じ福岡県に住んでいながら、旦過市場には行ったことはなく、当然のことながら「小倉昭和館」にも足を運んだことはない。だが、画像をチェックする限りこの映画館の設備は満足できるものとは言えないようだ。客席は急勾配で、バリアフリー環境とは程遠い。座席自体も広いように見えない。つまりは“昔ながらの街の映画館”である。
こういう劇場の佇まいには郷愁感は覚えても、決してその有り様は現在に通用するものとは思えない。こういう“昔ながらの街の映画館”の多くが淘汰され、シネコンに置き換わったように、このビジネスモデルは古いのだ。35ミリフィルムの映写機や、有名人のサインなどの貴重な資料があるとしても、それは“映画をちゃんと見せる”という本来の映画館の目的とは別物である。
ならば被災後のこの劇場の在り方はどうなのかといえば、まずは当然のことながら、復活はして欲しい。何しろ、新旧取り混ぜたこの映画館の上映ラインナップは映画好きにとっては堪えられないものだ。しかし、それが土地区画整理事業の対象にはなっていない今の土地で営業を再開するのは賛成できない。とにかく、災害に巻き込まれる可能性が小さいエリアに移転するのが最優先事項だ。そして、顧客の立場を十分に考えた設備を整えて欲しい。