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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「F エフ」

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 98年作品。金子修介監督作品としては珍しいラブコメで、観る前は若干の危惧があったが(笑)、実際に接してみると良く出来たシャシンだと思った。設定は面白く、各キャラクターは適度に“立って”おり、何よりキャスティングが秀逸だ。そこに金子監督らしい超ライトな感覚が散りばめられている。昨今は乱造気味のラブコメものだが、本作ぐらいのレベルは確保してほしいものだ。

 OLの荻野ヒカルは、中学時代からの友人である久下章吾と惰性で付き合っていた。章吾は決して悪い人間ではないが、少しも胸がときめかない。まさに彼女の恋愛スキルはFランクだ。ある日、ヒカルは謎めいた男と出会う。愛想のよくない彼に、ヒカルは勝手に“F”というあだ名を付けてしまう。数日後、ヒカルが偶然聴いていたラジオ番組に、その男がディスクジョッキーとして出演していることに驚く。



 実はその男は英国ロイヤルバレエシアターで日本人としては初めてプリンシパルになった古瀬郁矢で、ケガで帰国して療養期間のみ“F”と名乗りラジオの仕事を引き受けていたのだった。そんなことを知らないヒカルは、ペンネームで彼の番組にハガキを送る。すると“F”はヒカルに愛の告白をしてしまい、番組は大反響を巻き起こす。鷺沢萠の小説「F 落第生」の映画化だ。

 ヒロインが偶然知り合った相手が著名なバレエダンサーだったというくだりは荒唐無稽のように思えるが、金子監督の“事実をマンガっぽく描く”という得意技が炸裂し、違和感が無い。ラジオを通じてのやりとりもセンスが良く、さらにはヒカルの偽物まで出現するようになって、コメディ的興趣は増すばかり。

 郁矢に扮するのは熊川哲也で、これが映画初出演。いかにも高慢で鼻持ちならないキャラクターながら、ラジオパーソナリティとしてのパフォーマンスは舌を巻くほど上手い。また内には純情な面も覗かせ、ヒカルが惹かれるのも無理はないと思わせる。割を食ったのが章吾で、彼のようなマジメで端から見れば申し分ない男でも、ロマンティックな要素が無ければ恋を成就させることは難しいという“絶対的真実”を体現させていて圧巻(?)である。

 演出はテンポが良く、最後まで弛緩することは無い。ヒカル役の羽田美智子と章吾を演じる野村宏伸も、いかにも当時のトレンディ俳優(苦笑)らしくライトでスマートな出で立ち。村上里佳子に戸田菜穂、阿部サダヲ、高田純次さらには久本雅美と、二の線と三の線とを巧みにブレンドした配役も光る。

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