Quantcast
Channel: 元・副会長のCinema Days
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2422

「ピースメーカー」

$
0
0
 (原題:The Peacemaker)97年作品。活劇編としては良く出来ている。ただし、細部の詰めは甘い。もっともそれは、製作年度を考えれば仕方が無いとも言える。もしも今撮るとすれば、この筋書きでは支持されないだろう。言い換えれば、そのあたりを無視すればかなり楽しめるシャシンであることは間違いない。

 冷戦が終結して数年後。ロシアが保有していた解体予定の核弾頭10発が盗み出され、そのうち1発は爆発する。残りの核弾頭を回収すべく、米国防総省は原子力科学者ジュリア・ケリーをはじめとする専門家たちを招集すると共に、テロ専門のデヴォー大佐は核弾頭を積んだトラックを探索する。その結果8発は確保できたが、残る1発は行方不明。そんな中、ボスニアの外交官デューサンが国連に派遣される。彼が核弾頭に関する情報を掴んでいると踏んだケリーとデヴォーは、デューサンを追う。



 まず、核兵器に関する知見があやふやなことが気になる。いくら米軍当局が上手く処理したつもりでも、これでは放射能が出っぱなしではないか。登場人物の大半は確実に被爆している。題名の“ピースメーカー”とは、平和維持を名目にユーゴ紛争に介入し、結果的に事態の混迷を招いたアメリカをはじめとする多国籍軍のことを揶揄したものだ。しかし、国際情勢というのは複雑なもので、一方を断罪するだけでは何もならない。その意味で本作が提示する解釈は一面的と言えるだろう。

 ただ、それらを抜きにすれば、この映画は退屈せずに最後まで対峙できる。ミミ・レダーの演出はパワフルで、展開は少しの淀みもなく、骨太のアクションを展開させている。また、本作は9.11よりも前に作られているのだが、あの事件を予感させるところがあるのも興味深い。主演はジョージ・クルーニーとニコール・キッドマンで、この2人が共演しての活劇というのは珍しいが、生き生きとスクリーン上を駆け巡っている。

 マーセル・ユーレスにアレクサンダー・バリュー、レネ・メドヴェセク、アーミン・ミューラー=スタールという脇の渋いキャスティングも効果的だ。なお、この映画はスピルバーグとジェフリー・カッツェンバーグ、デイヴィッド・ゲフィンが設立したドリームワークスSKGの第一作である(設立は94年)。正直言って当時は長続きしないと予想していたが、紆余曲折はあったにせよ、今でも存続しているのは大したものだと思う。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2422

Trending Articles