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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「冬物語」

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 (原題:Conte D'Hiver )91年作品。通常ではとても映画にならない設定やモチーフを採用しながら、結果として味わい深い作品に仕上げてしまうのは、さすがフランス映画史に名を刻む名匠エリック・ロメールの仕事だけのことはある。いくらプロセスが不自然に見えても、人間を動かすものは外見や余計な講釈などではなく、純粋な気持ちとインスピレーション、そして偶然性であることを何の衒いも無く表明する。90年代に製作された“四季の物語”シリーズ第2弾である。

 パリに住む若い女フェリシーは、夏のバカンス先であるブルターニュでシャルルと出会い、恋仲になる。やがてバケーションは終わり、彼女は帰り際に料理の修行のために渡米するという彼に自分の住所を教えた。5年後の冬、フェリシーはシャルルとの間に出来た娘エリーズを抱えてシングルマザーとして生きていた。うっかり彼に間違った住所を教えてしまい、それから連絡が付かなくなってしまったのだ。

 離婚したばかりの男友達マクサンスは、彼女を後妻に迎えるべくプロポーズする。承知した彼女だったが、そのことを知ったもう一人の男友達ロイックは、フェリシーを自分になびかせるように猛チャージを掛ける。困った彼女だったが、それから思いがけないことが起こる。漫然と恋人に間違った住所を告げてしまうほど天然で、無教養であることを痛感しているヒロインが、何とか自分を取り戻すまでを描いたドラマだ。

 マクサンスとロイックは頼りない存在で、結婚相手に相応しくないのは誰の目にも明らかだが、フェリシーは当初“まあいいか”という感じで流されてしまう。ところがその状況が覆されるのが、彼女の能動的な自覚によるものでは無いのが面白い。

 いや、正確には彼女なりに周囲を見極めるスキルを徐々に積んではいるのだが、それが現実の行動に繋がるまでには程遠かったのだ。それが“ある切っ掛け”によって彼女の世界はコペルニクス的転回を見せ、加えて“あり得ない出来事”が起こって話は収まるところに収まってしまう。まさしく御都合主義の権化だが、実際はそんな偶然によって人生が変わるなんてことは珍しくないのだ。ただ、映画としてそれでは物語性に欠けるので、大抵の映像作家はやらないだけである。

 ところがそこはロメール御大、淡々としたタッチで自然体に徹し、観る者を納得させてしまう。これはひとえに、作者が主人公を信じ切っているからだろう。無垢で正直なフェリシーには、偶然が転機を引き込むだけの資格があるのだ。ここまで達観してしまうと、感心するしかない。主役のシャルロット・ヴェリをはじめ、フレデリック・ヴァン・デン・ドリーシュ、ミシェル・ヴォレッティ、エルヴェ・フュリクといった顔ぶれには馴染みは無いが、皆良い演技をしている。リュック・パジェスのカメラがとらえた、パリをはじめとするフランス各地の風景は素敵だ。

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