開巻30分程度はとても面白かった。しかし、それ以降は次第に盛り下がり、終わってみれば“普通の映画”である。とにかく、日本映画にはこの手の題材を活かす人材もノウハウも揃っていないことを改めて痛感した。原作は人気漫画らしいが、製作側も、よくある“ポピュラーな元ネタの映画化”という範囲内でしか仕事をしていないことは明白だ。
京都の芸術大学の美術科に入学した漆原朔は、ひょんなことから現代音楽研究会なる変態っぽい(笑)サークルに無理矢理に参加させられる。偶然にそこには異母兄の貴志野大成と、その彼女であるヴァイオリニストの小夜もいた。大成は天才作曲家として注目されていたが、実は朔も小夜に憧れていた。その微妙な関係性に戸惑う朔だったが、そこに彼に多大な関心を寄せるピアノ科の上級生である浪花凪が現れる。さそうあきらによる同名コミックの映像化だ。
朔が入部するのは文字通り現代音楽を追究しようという集まりで、顧問として担当教授も参画している。彼らが賀茂川の両岸に弦を張り、風で共鳴するサウンドに乗せて楽器を奏でるシーンは面白い。そして、サークルの中心人物で問題児の青田完一の作品を、凪のヴォーカルによってステージで披露するくだりもインパクトが強い。ところが、本作に興味を惹かれるのはそこまでなのだ。
朔と大成との、幼い頃からの確執。そして、大成と小夜との恋の行方。また、学内での派閥争いなど、大して楽しくもないモチーフが延々と並べられる。もちろん上手く作ってあれば文句はないのだが、扱いは凡庸だ。題材が音楽で、しかも現代音楽というコアなネタを採用しているのだから、映画はそこに集中して音楽の何たるかを突き詰めるような展開にすればいいものを、作り手にはそんな度胸も力量も無かったようだ。
だいたい、朔と大成の父親が有名作曲家で、朔の方がその才能を受け継いでいるという設定ながら、天才らしいパフォーマンスを少しも見せてくれないのには参った。大成の本業は作曲であるはずが、指揮者として振る舞うパートが長いのも釈然としない。
大成よりも青田の方が数段面白いキャラクターなので、こちらを朔ともっと絡ませたら少しは盛り上がったかもしれない。極めつけは凪が河原で歌う場面で、ここだけお手軽なJ-POPのノリになっており、本筋の現代音楽はどこに行ったのかと、脱力するばかりである。谷口正晃の演出は可も無く不可も無し。
主演の井之脇海をはじめ、山崎育三郎に川添野愛、石丸幹二、濱田マリ、神野三鈴など、いずれも精彩を欠く。凪役の松本穂香は歌唱のプロモーションのために映画に出ているという感じだし、青田に扮する阿部進之介は途中から出番が少なくなるのも不満だ。京都の町の風景は小綺麗に撮られているが、奥行きがなく平板である。
京都の芸術大学の美術科に入学した漆原朔は、ひょんなことから現代音楽研究会なる変態っぽい(笑)サークルに無理矢理に参加させられる。偶然にそこには異母兄の貴志野大成と、その彼女であるヴァイオリニストの小夜もいた。大成は天才作曲家として注目されていたが、実は朔も小夜に憧れていた。その微妙な関係性に戸惑う朔だったが、そこに彼に多大な関心を寄せるピアノ科の上級生である浪花凪が現れる。さそうあきらによる同名コミックの映像化だ。
朔が入部するのは文字通り現代音楽を追究しようという集まりで、顧問として担当教授も参画している。彼らが賀茂川の両岸に弦を張り、風で共鳴するサウンドに乗せて楽器を奏でるシーンは面白い。そして、サークルの中心人物で問題児の青田完一の作品を、凪のヴォーカルによってステージで披露するくだりもインパクトが強い。ところが、本作に興味を惹かれるのはそこまでなのだ。
朔と大成との、幼い頃からの確執。そして、大成と小夜との恋の行方。また、学内での派閥争いなど、大して楽しくもないモチーフが延々と並べられる。もちろん上手く作ってあれば文句はないのだが、扱いは凡庸だ。題材が音楽で、しかも現代音楽というコアなネタを採用しているのだから、映画はそこに集中して音楽の何たるかを突き詰めるような展開にすればいいものを、作り手にはそんな度胸も力量も無かったようだ。
だいたい、朔と大成の父親が有名作曲家で、朔の方がその才能を受け継いでいるという設定ながら、天才らしいパフォーマンスを少しも見せてくれないのには参った。大成の本業は作曲であるはずが、指揮者として振る舞うパートが長いのも釈然としない。
大成よりも青田の方が数段面白いキャラクターなので、こちらを朔ともっと絡ませたら少しは盛り上がったかもしれない。極めつけは凪が河原で歌う場面で、ここだけお手軽なJ-POPのノリになっており、本筋の現代音楽はどこに行ったのかと、脱力するばかりである。谷口正晃の演出は可も無く不可も無し。
主演の井之脇海をはじめ、山崎育三郎に川添野愛、石丸幹二、濱田マリ、神野三鈴など、いずれも精彩を欠く。凪役の松本穂香は歌唱のプロモーションのために映画に出ているという感じだし、青田に扮する阿部進之介は途中から出番が少なくなるのも不満だ。京都の町の風景は小綺麗に撮られているが、奥行きがなく平板である。