(原題:Pacific Rim )観ている間、とても楽しかった。さすが幼い頃から日本製のロボットアニメや特撮怪獣映画に親しんでいたというギレルモ・デル・トロ監督、凡百のハリウッド製巨大モンスター映画とは一線を画する存在感を発揮させている。
太平洋の海溝から突如として巨大怪獣が現れ、環太平洋地域(パシフィック・リム)の都市群に多大な損害を与える。各国は二足歩行の戦闘用ロボット“イェーガー”を開発して対抗。勝利を収めるが、怪獣は次々と出現し、しかも次第にパワーアップしてくる。イェーガーだけでは対処出来なくなったと考える諸国は、巨大な防壁の建設に着手しようとする。
そんな中、かつて戦闘中にパートナーを失ったイェーガーの操縦士ローリーは、新しい相棒として日本人女性のマコを紹介される。しかし二人の息はなかなか合わず、イェーガーのパイロットとして出動する許可が下りない。一方で、強力な怪獣が建設中の防壁を破壊して都市に侵入してくる事態が発生し、防衛の主力として再びイェーガーが脚光を浴びる。果たしてローリーとマコは新型イェーガーを操って参戦することが出来るのか。
まず、怪獣がいかにも“それらしい”造型であるのが嬉しい。もちろんコアな国産特撮映画マニアには物足りなく映るだろうが、怪獣という概念が確立されておらずクリーチャー・デザインが“単なる巨大○○”のルーティンから抜け出せない従来のハリウッド作品と比べれば、格段の“進歩”であろう。
そしてイェーガーが乗り物操縦になっており、しかも搭乗者の身体動作をトレースし動作するという構造になっているのは、欧米の映画としては“画期的”だと言える。これはまるで「勇者ライディーン」や「ジャンボーグA」ではないか(笑)。さらにはイェーガーは“二人乗り”であり、両者が脳波レベルでシンクロして初めて動くという設定は秀逸。それにより、搭乗者の過去の記憶が蘇るくだりに無理がなくなった。だから回想シーンにも不自然さは見当たらない。
演出テンポは快調で、戦闘シーンは迫力満点だ。敵がどうして宇宙空間ではなく深海から現れるのかという説明も怠らず、どうやれば相手を駆逐出来るのか、その方法も理にかなっている。
悪徳商人を演じるロン・パールマンを除けば、ローリー役のチャーリー・ハナムや環太平洋防衛軍の司令官に扮するイドリス・エルバなど馴染みの無いキャストが多い。これはSFXに製作費がかけられて俳優のギャラに回らなかったとも考えられるが(爆)、それぞれ悪くない演技をしているので不満はない。
マコ役は菊地凛子だが、珍しく“可愛く”撮られており、少なくとも“欧米人が抱くステレオタイプの日本人女性のイメージ”とは異なる、見ようによっては“萌え系”のテイストも感じられ、やっぱりこの監督は分かっていると思わせる。そしてマコの子供時代を演じた芦田愛菜は、「宇宙戦争」でのダコタ・ファニングに匹敵するほどの絶叫演技で大きなインパクトを与える。たぶんこれを機会に海外での仕事も増えるのではないだろうか。