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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「パンケーキを毒見する」

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 第99代内閣総理大臣の菅義偉を描いた政治ドキュメンタリーで、監督はTVディレクター出身の内山雄人。このような題材を取り上げ、この時期に公開したことは注目すべき点なのかもしれない。しかし、映画自体は低調だ。何やら、政治をネタにすることだけで満足してしまい、肝心の内容に関しては練り上げられずに製作されたような印象を受ける。これでは、肝心の主題に関しても何ら訴求力を高められない。失敗作と言って良いだろう。

 冒頭で“菅首相および周辺の関係者に取材を申し込んだが、すべて断られた”という意味の作者のコメントが表示されるが、もうこの時点でダメである。一度断られたぐらいで引き下がるようでは、何のために映画を撮るのか分からない。マイケル・ムーアや原一男のように、アポ無し夜討ち朝駆けの突撃取材ぐらいしたらどうなのか。



 結果的に、本作は丹念に政治に関する報道を追っている者からすれば“既知の事柄”だけを羅列するものになってしまった。それでも上西充子・法政大教授による国会質疑の“解説”は面白かったが、それ以外は新鮮味のないモチーフばかり。その代わりに挿入されるのが、稚拙で趣味の悪いアニメーションや、丁半博打の女性壺振りによる何とも言えない“寸劇”、わざとらしいアニメ声のナレーションなど、気勢の上がらないものばかり。これで政府を風刺した気になっているのならば、製作者の使命感はさほど高いものとは言えないだろう。

 さて、言うまでもなく菅義偉はロクな宰相ではない。自分の考えと合わない意見など全然聞かないし、政策はすべて的外れか後手後手で、大いに国益を損ねている。だいたい明確な国家観さえないのだ(それでいて、権力欲だけは凄まじい)。問題は、菅政権が(最近はさすがに下落したとはいえ)いまだに約3割もの支持を集めていることだ。

 理屈で考えれば積極的に菅政権を支持する理由など無いのだが、それでも手前勝手な御託を並べて支持を表明する者は存在する。当事者への取材が出来ないのならば、頑迷な菅政権支持者を見つけ出して議論を吹っ掛けたり、ハナから投票する気のない政治に無関心な連中を一喝し、場合によっては取っ組み合いのケンカをするぐらいの(笑)根性を見せてほしい。いずれにしても、微温的な展開に終始する本作は、菅政権に反対する層のガス抜きにはなるかもしれないが、それ以上のものではない。

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