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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「クワイヤボーイズ」

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 (原題:The Choirboys )77年作品。ロバート・アルドリッチ監督といえば骨太な痛快娯楽作の担い手として知られ、その分野ではかなりの実績を残している。特に「ロンゲスト・ヤード」(74年)や遺作の「カリフォルニア・ドールズ」(81年)などは活劇映画史上に残る快作だと思う。本作は同監督のフィルモグラフィの中では地味な存在だが、それでも無手勝流の豪快さで最後まで楽しまてくれる。

 ロスアンジェルス市警のウィルシャー署に勤務する地域課のメンバーは、揃いもそろって問題人物ばかり。自らを“クワイヤボーイズ=少年聖歌隊”と称し、日々これ悪ノリとハレンチ行為に勤しんでいた。リーダー各のウェーレンは勤続20年のベテランだが、これまで何かと上司に反抗し、定年間近になってもヒラ巡査のままだ。



 そんな中、課内で取り返しのつかない不祥事が起こる。事態を収拾したい上層部は、ウォーレンに退職後の好処遇をチラつかせて虚偽の供述をさせる。そのため仲間たちは処分されてしまうが、悔恨の念に駆られたウォーレンは捨て身の行動に出る。警察小説の名手と言われるジョゼフ・ウォンボーの著作の映画化だ。

 署内の面々や町のゴロつきども徹底的にからかう(時に逆襲されるが ^^;)はみだし警官たちの所業は大いに笑えるが、内実はかなりブラックである。飛び降り自殺を図ろうとする少女に対する振る舞いなど、冗談では済まされない。また、この時期のアメリカ映画ではよく取り上げられているベトナム戦争の後遺症に関しても言及されており、閉所恐怖症により幻覚に襲われて発砲する者もいる始末だ。

 ヘタすると暗鬱なタッチに終始するネタばかりなのだが、そこはアルドリッチ御大、豪快なユーモアで乗り切ってしまう。終盤の“クワイヤボーイズ”の活躍により、後味の良い幕切れになっているのは評価して良い。

 ウォーレン役のチャールズ・ダーニングをはじめ、ルイス・ゴセット・ジュニアにティム・マッキンタイア、ランディ・クエイド、さらにはジェームズ・ウッズにバート・ヤングと、濃いキャストを集めていながらそれぞれに見せ場を用意し、キャラも十分立てるという段取りも十分頷ける。なお、登場人物たちのあまりの無軌道ぶりに原作者のウォンボーが気を悪くして、自らも参画した脚本のクレジットから名前を取り下げるという逸話もあったらしい。

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