(原題:Robot&Frank)設定は面白いが、映画はまったく盛り上がらない。これはひとえに演出と脚本が上手くいっていないからだ。
舞台は近未来。郊外に一人で住む老人フランクは、このごろめっきり物忘れが酷くなり、日常生活にも支障を来すようになった。心配した長男が、介護用のロボットをフランクにあてがう。だが、彼の本性は“泥棒”であった。若い頃には逮捕され、臭い飯を食った経験もある。久々に自分の“相棒”になりそうな奴が現れたことで、さっそくフランクはロボットに泥棒のノウハウを教え、共に盗人稼業に復帰しようとする。
元泥棒で認知症気味の老人と、融通の利かない機械人形との珍道中という、いくらでも楽しくなりそうな素材を、本作の作り手達は台無しにする。そもそも、このネタを扱う上で“家族の絆を再確認させよう”などという御大層なモチーフを前面に出すこと自体が大間違い。そんなことは“本題”であるはずのおちゃらけ笑劇のオマケとして付け合わせれば良い。
トンチンカンなことばかり言う老人と、それをいちいちクソ真面目に受け答えるロボットとの漫才を面白おかしくキメた後は、どう見ても侵入不可能な“難攻不落のターゲット”に果敢に挑む彼らの大活躍を、ハッタリかました演出と派手な映像で賑々しく展開させれば良かったのだ。しかしこの映画はそれに徹しきれなかった。
中途半端な窃盗行為と、煮え切らない親子の情愛と、マヌケすぎる警察当局と、これまたマヌケすぎる“被害者”とが、生ぬるい展開の中で漫然と並んでいるだけ。1時間半ほどの映画だか、かなり長く感じられた。
あまり予算が掛かっていない映画のようだが、金が無いというのは“面白くなくても良い”という言い訳にはならない。アイデア次第で何とかなるものだが、監督のジェイク・シュライアーと脚本のクリストファー・D・フォードにはそこまでの甲斐性は無かったようだ。
だいたい、一般消費者に市販されるロボットには最初から“法令遵守システム”みたいなものが組み込まれていると考えるのが普通ではないだろうか。それをジジイの屁理屈一つで簡単に犯罪行為に荷担してしまうというのは、どう見てもおかしい。それにロボットのデザインが某社の有名モデルとそっくりで、オリジナリティのカケラも無いのも痛い。
フランク役にフランク・ランジェラ、息子にジェームズ・マースデン、娘にリヴ・タイラー、主人公が慕う女性にスーザン・サランドン、そしてロボットの声にピーター・サースガードと、けっこうキャスティングは頑張っているのに残念だ。