これはつまらない。題材は面白そうなのだが、考察が浅くて映像も限りなく安っぽい。撮りようによっては観る者を戦慄せしめるようなダークな世界を創出できたはずだが、よくある“人気コミック(しかも長編)の無理な映画化”のパターンにはまり込み、製作側も“やっつけ仕事”に終始しているようだ。これでは評価のしようがない。
新宿駅西口で車上生活を送る名越進は、記憶喪失に陥っていた。どうやら以前は外資系企業に勤め、羽振りの良い生活を送っていたようなのだが、ハッキリとは思い出せない。ある日彼は、伊藤学という異様な風体をした若い男に声を掛けられる。伊藤は研修医で、名越に報酬70万円を条件に頭蓋骨に穴を開けるトレパネーション手術を持ちかける。
手術をすることによって第六感が芽生える可能性があり、伊藤はそれを研究したいのだという。やむなく手術を受けた名越は、左目だけで他人見ると、異様な形に変化していることに驚く。伊藤はその現象を深層心理の視覚化だと言い、名越が目撃するクリーチャーをホムンクルスと名付けた。原作は山本英夫による同名コミックである。
まず、ホムンクルスの造型の拙さには脱力する。内面が薄っぺらい奴はペラペラの姿かたちで、下半身がだらしない者は文字通り腰から下がフワフワしており、何らかのトラウマを抱えた人間はそれが“そのまま”映像化される。捻りも深みも何もなく、見ていて鼻白むだけだ。監督が「呪怨」シリーズなどの清水崇なのでいくらでもショッキングなモチーフを提供できるはずだが、まるで不発である。
名越が関わるヤクザの組長や女子高生が抱える屈託は、失笑してしまうほど扱いが軽量級だ。ついでに言えば、伊藤の内面にあるコンプレックスも全然大したことがなく、この程度でいったい何を悩んでいるのかと言いたくなる。中盤以降は名越は記憶を取り戻していくようだが、それがどういう切っ掛けで、どのようなプロセスを経ているのかまるで不明。彼が出会う謎めいた若い女との関係性も、見終わってみれば陳腐に過ぎる。
困ったのは、本作のキャストは綾野剛に成田凌、岸井ゆきの、内野聖陽といった悪くない面子を揃えているにもかかわらず、それぞれの持ち味を出せていないことだ。特に綾野と成田にとっては、この映画が“黒歴史”になりはしないかと心配してしまった。
それから腹が立つことに、本作の入場料は1900円均一である。前売り券を除けば、学割もシニア割も夫婦50割も劇場招待券も利用不可だ。リリース元のエイベックスや協賛のNetflixが何を考えているのか知らないが、斯様な観客を劇場から遠ざけるような所業は理解不能である。
新宿駅西口で車上生活を送る名越進は、記憶喪失に陥っていた。どうやら以前は外資系企業に勤め、羽振りの良い生活を送っていたようなのだが、ハッキリとは思い出せない。ある日彼は、伊藤学という異様な風体をした若い男に声を掛けられる。伊藤は研修医で、名越に報酬70万円を条件に頭蓋骨に穴を開けるトレパネーション手術を持ちかける。
手術をすることによって第六感が芽生える可能性があり、伊藤はそれを研究したいのだという。やむなく手術を受けた名越は、左目だけで他人見ると、異様な形に変化していることに驚く。伊藤はその現象を深層心理の視覚化だと言い、名越が目撃するクリーチャーをホムンクルスと名付けた。原作は山本英夫による同名コミックである。
まず、ホムンクルスの造型の拙さには脱力する。内面が薄っぺらい奴はペラペラの姿かたちで、下半身がだらしない者は文字通り腰から下がフワフワしており、何らかのトラウマを抱えた人間はそれが“そのまま”映像化される。捻りも深みも何もなく、見ていて鼻白むだけだ。監督が「呪怨」シリーズなどの清水崇なのでいくらでもショッキングなモチーフを提供できるはずだが、まるで不発である。
名越が関わるヤクザの組長や女子高生が抱える屈託は、失笑してしまうほど扱いが軽量級だ。ついでに言えば、伊藤の内面にあるコンプレックスも全然大したことがなく、この程度でいったい何を悩んでいるのかと言いたくなる。中盤以降は名越は記憶を取り戻していくようだが、それがどういう切っ掛けで、どのようなプロセスを経ているのかまるで不明。彼が出会う謎めいた若い女との関係性も、見終わってみれば陳腐に過ぎる。
困ったのは、本作のキャストは綾野剛に成田凌、岸井ゆきの、内野聖陽といった悪くない面子を揃えているにもかかわらず、それぞれの持ち味を出せていないことだ。特に綾野と成田にとっては、この映画が“黒歴史”になりはしないかと心配してしまった。
それから腹が立つことに、本作の入場料は1900円均一である。前売り券を除けば、学割もシニア割も夫婦50割も劇場招待券も利用不可だ。リリース元のエイベックスや協賛のNetflixが何を考えているのか知らないが、斯様な観客を劇場から遠ざけるような所業は理解不能である。