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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「テレフォン」

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 (原題:Telefon )77年作品。ドン・シーゲル監督によるスパイ・アクション編で、かつての「真昼の死闘」(70年)や「ダーティハリー」(71年)などの切れ味は無いものの、観ている間は退屈しない娯楽作だ。また、捻った設定や展開は脚本担当のピーター・ハイアムズによるところが大きいと思われる。

 米ソのデタントが展開していた70年代後半、コロラド州の修理工場に掛かってきた電話を取った店主が、爆弾を車に積み米陸軍基地に突っ込んで自爆テロを引き起こす。続いてフロリダ州で、小型機でチャーター業をしている男のもとに例の電話が掛かり、彼は米海軍基地に爆弾を積んだ自家用機で体当たりを試みる。



 どうやら、KGBにより洗脳された51人もの人間がアメリカに送りこまれ、電話によって暗示が発動して破壊活動をするようにされていたらしい。そして、その首謀者であった過激なスターリン主義者がアメリカに逃れていた。KGBはその者を抹殺するためボルゾフ少佐を渡米させる。彼は同僚のバーバラと夫婦を装って犯人のダルチムスキーを追う。

 話のアウトラインは凝ってはいるが、展開は平易だ。追う者と追われる者という形式が明確で、斜に構えたところが無く、分かりやすく進む。とはいえ、終盤には“ドンデン返し”が控えている。しかし、これは決して観る者の意表を突くようなものではなく、無理筋の居心地の悪さは存在しない。

 シーゲル監督の仕事ぶりは淀みがなく、アクション場面が少ないのは不満ながら、不要な緊張感を強いることは無い。主演はチャールズ・ブロンソンで、珍しい軍服姿が拝めるのは有り難い。東欧系の血を引き、思考よりも行動が先に出るキャラクターなので、役柄に合っている。相手役は“いつもの”ジル・アイアランドではなく、リー・レミックというのも良かった(笑)。また、敵役のドナルド・プレゼンスもさすがの存在感だ。

 音楽はラロ・シフリンだが、ここでも的確なスコアを残している。それにしても、本作が撮られた当時は冷戦が緩和されるような雰囲気があったのだが、その後のソ連のアフガン侵攻によってフッ飛んでしまったのは何とも皮肉だ。

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