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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「最後のマイ・ウェイ」

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 (原題:CLOCLO)監督のフローラン・エミリオ・シリは「スズメバチ」で知られるアクション派であり、本作においても主人公が直面したトピックがテンポ良く時系列的に並べられているが、伝記映画としての密度はかなり低い。登場人物の内面には踏み込まず、ただ映像が流れていくだけだ。

 世界的ヒット曲「マイ・ウェイ」を作ったフランスのミュージシャン、クロード・フランソワの生涯を映画化したものだが、正直言って私はこの曲を彼が作曲したものだとは知らなかった(英語の歌詞を作成したポール・アンカが曲も手掛けたと思っていた)。それどころか、クロード・フランソワという歌手も今回初めて知った。

 何でもフランスを代表する往年のシンガーであり、6千万枚以上のレコードを売ったという大スターらしいが、今まで名前も聞いたこともなかった。彼が活躍していた60年代から70年代後半にかけては、日本でも随分とフレンチ・ポップスが受け入れらていたものだが、これほどの大物がどうして我が国では知られていなかったのか、観る前は疑問に思っていた。

 ところが、劇中で流される彼のナンバーの数々を聴いて、その理由が分かったような気がする。正直言って、彼の曲は(「マイ・ウェイ」を除けば)“軽い”のだ。お世辞にも洗練されているとは言えず、深みの無いチャラチャラした曲想は聴いていて1分で飽きる。これはフランスの(土着の)歌謡曲でしかなく、ワールドワイドな人気など望めない。同世代のミッシェル・ポルナレフやジョニー・アリディの方が、よっぽど幅広い層にアピール出来る才能を持っていたと思う。

 さて、映画は序盤にエジプト生まれのフランソワと失意の内にこの地を去る彼の父親との確執を取り上げているが、これがいかにも通り一遍で、興趣に乏しい。このあたりをもっと突っ込めば面白くなったとも思えるが、活劇派のシリ監督には望むべくもない。あとは彼が成功への階段を上り詰め、奔放な女性関係を含めて、事故であっけなく世を去るまでを要領よく紹介するだけだ。

 ただし、主演のジェレミー・レニエは好演。小柄ながら抜群のリズム感で有名ミュージシャンになりきっている。特に、オーティス・レディングのコンサートに出掛けたフランソワが、興奮のあまり客席で派手に踊り出してしまうくだりは圧巻だ。

 全体的に、楽曲の出来はイマイチながらミュージカル的な場面は良く出来ていて、その意味での満足度は高いだろう。この時代のファッションや風俗の再現も上手くいっていると思う。

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