(原題:OUTSIDE THE WIRE)2021年1月よりNetflixにて配信。外観は面白そうなアクション仕立ての近未来SFなのだが、中身は本当につまらない。ストーリーはもちろん、演出のテンポやキャラクター設定、そしてキャストの仕事ぶりに至るまで、褒めるべき点を見つけるのが難しい。もっとも一箇所だけ少し興味を惹かれた部分はあるが、そのことをもって作品の評価が上がるわけでもない。
2036年、東欧では激しい内戦が巻き起こっていた。平和維持活動に従事するため、アメリカ海兵隊は無法地帯に駐留していた。ドローンのパイロットであるハープ中尉は、味方がやられているのを見かねて独断で空爆を敢行。結果として多くの兵の命を救うが、上層部に逆らったことで倫理委員会からハープは厳しく叱責されてしまう。結果として彼は別の遊撃隊に飛ばされるが、新しい上官のリオ大尉は何とアンドロイドだった。2人は反乱軍の首魁で、核ミサイルの奪取を狙うヴィクトル・コバルを追い詰めるため、最前線を奔走する。
最新AIを搭載しているはずのリオ大尉だが、あまり頭がキレるようには見えず、最後までその行動規範は合理的ではない。ハープとのやり取りは、黒人のアンチャン同士の言い合いとしか思えない。敵への対処も行き当たりばったりで、とにかく近未来らしくロボット兵士も登場させていながら、ロクに活躍もさせていないのには閉口した。
背景こそ東欧の風景が広がっているが、出てくる人員の数が異常に少なく、戦闘シーンがスカスカだ。リオ大尉は機械人間らしい腕っ節の強さを見せはするが、「ターミネーター」シリーズなどには遠く及ばない。2人がたどり着いた国境近くのロシアの核地下サイロは、守備兵を含めてスタッフがほとんどおらず、兵器や設備のメンテナンスは誰がやっているのだろうと心配になるほどだ。
ミカエル・ハフストローム監督の仕事は気合いが入っておらず、各シークエンスの繋ぎに難がある。アンソニー・マッキーをはじめダムソン・イドリス、エンゾ・シレンティ、エミリー・ビーチャムといった配役には魅力が無く、感情移入できるる相手がいないのには困った。あと、冒頭に述べた“少し興味を惹かれた部分”というのは、劇中で“この事態を招いたのはアメリカだ”と断言していることだ。したがって、単純な米軍バンザイ映画になっていないところは認めて良い。ただもちろん、それだけで映画のクォリティが上がることはないが。