(原題:The Cure)95年作品。困った映画だ。舞台はミネソタ州の片田舎。子供を顧みない母親と暮らす12歳のエリック(ブラッド・レンフロ)と、隣家に住むエイズ患者の11歳のデクスター(ジョゼフ・マゼロ)との友情とやらを描くドラマ。監督はピーター・ホートン。
何よりあきれるのが主人公エリックの底無しのバカさ加減である。彼はデクスターの病気を治そうと、あらゆる種類のチョコレート・バーを無理矢理食わせたり(自分も食って腹をこわしたりする)、エイズに効く薬草があるかもしれないと、そこらへんに生えている雑草雑木を煎じて飲ませたりする。これがどういうことになるか、12歳にもなればわかろうというものだが・・・・。案の定、デクスターは誤って毒草を飲まされ救急車で運ばれる。
さらにエリックは、エイズ特効薬を発見したというニューオーリンズの医者を訪ねて(というのは口実で、同じ街に住む父親に会うのが目的)、川を下る危険な旅にデクスターを連れ出す。デクスターが血友病の可能性があるというのに何考えてんだか。そして道中、人の金を盗んでも涼しい顔をしている。
デクスターの母(アナベラ・シオラ)は優しく理解のある人物として設定されているようだが、私に言わせればこれもバカだ。確実に言えるのは、エリックがいなければデクスターはもっと長生きしたということ。私がデクスターの親だったら、エリックを腰が立たなくなるまでシバき倒しているところだが、母親は何も言わない。もちろんエリックも心からの謝罪も反省もしていない(ように見える)。
だいたい悪趣味な部屋や、人形を焼いたり縛り首にして遊ぶ性癖からして、エリックは一種のサイコパスではないか。たぶんこれに懲りず、将来は札付きのイジメっ子として相手を自殺に追いやったり、反対に逆襲されて殺されたり、ロクな人生を歩まないだろう。こういう問題児をさも正しいように爽やかなタッチで綴るこの映画の罪は重いし、エイズ患者に対する理解を妨げる要因にもなるのではないか。
それにしても、エリックに触発されて次第に無謀な遊びを覚えるデクスターは悲しい。教訓“エイズはめったなことでは感染しないが、バカは簡単に伝染する”。デイヴ・グルーシンの音楽だけはさすがに美しかったものの・・・・。