米国JBL社の新作スピーカーDD67000の試聴会に足を運んでみた。本機の価格は1本が300万円(税抜き)で、ペアでは600万円。当然のことながら私は買えないし、図体のデカさも考え合わせるとほとんどの一般ピープルにとって縁の無い商品だ。しかし、会場の一部では商談めいた会話も交わされていたようで(爆)、カネはあるところにはあるものだと感心してしまった。
駆動していたアンプおよびプレーヤーは米国MARK LEVINSON社のもので、これまた高額商品。おそらくは定価ベースで総額1300万円ぐらいのシステムになっていたと思われる。
さて実際聴いてみた感想だが、とにかく“良くも悪くもJBLである”ということに尽きる。音場の展開力は他社製品と比べると弱い。特に奥行きの表現には難がある(まあ、使われていたソフト自体がそういうものばかりだったのかもしれないが ^^;)。音色は一本調子で陰影に乏しく、クラシックの弦楽や声楽曲の再生に向いているとは思えない。
しかし、ソースがジャズになると様相が一変。パァッと前に出る屈託の無い明朗サウンドで、実に楽しく聴ける。“最近のJBLの製品は幅広いジャンルに適応出来るようになった”と言うショップのスタッフもいるが、こうして改めて聴いてみると、やはりこのブランドはジャズの再現性に特化していると思わざるを得ない(もちろん、JBLでクラシックをメインに鳴らしているユーザーもいることは知ってはいるが)。
昔からJBLのスピーカーは“高級舶来スピーカーの代名詞”と言われていた。音も個性が強く、一度聴いたら忘れられない印象を残す。私も若い頃に初めて同社のスピーカーに接したとき、オーディオシステムから奏でられるサウンドの評価基準に“音色(おんしょく)”という概念があることを知った。それまでは聴感上の物理特性が全てだと思っていたのだが、JBLのサウンドを聴いて世の中には“明るい音”なるものが存在することを認識した次第だ。
もっとも、現在は私も年齢を重ねたせいか、JBLのように明朗な積極性一辺倒の音は“たまに聴くのは良いのだが、常時接していると疲れる”ようになった(笑)。たぶん同社のスピーカーを購入することはないだろう(まあ、このDD67000なんかは高価過ぎるのでハナから対象外だが ^^;)。
とはいえ、国産製品とはまるっきり異なるサウンド世界を味合わせてくれるという意味で、オーディオに興味を持ってから日の浅い初心者には、(英国のTANNOYと並んで)ぜひとも聴いていただきたいブランドである。