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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」

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 (原題:DER TRAFIKANT )何だか妙な映画である。興味深いネタは散りばめられてはいるが、それらを束ねて骨太な映画的興趣に持っていこうという意思が感じられない。総花的に事物を並べているだけだ。反面、映像はヘンに凝っていて、結局作者がやりたかったのは奇を衒った画面構成であり、歴史的なモチーフはその“前振り”に過ぎなかったのかと思いたくなる。

 1937年、ナチス・ドイツによる隣国オーストリアに対する干渉は激しくなり、併合寸前の様相を呈してくる。そんな中、17歳のフランツは田舎の実家を離れ、煙草屋の店員として働くためウィーンにやってくる。そこで知り合ったのが、著名な心理学者のジークムント・フロイトだった。ボヘミア出身の若い女に一目惚れしたフランツは、フロイトにいろいろ助言をもらう。



 やがて街中ではハーケンクロイツ旗が数多く翻るようになり、リベラル系の新聞を取り扱っていた煙草屋の店主も逮捕される。フロイトの身辺も危うくなり、周囲の者は彼に英国への亡命を勧めるのだった。ローベルト・ゼーターラーの小説「キオスク」の映画化だ。

 いくらでもシビアな展開が可能な時代設定であり、実際に主人公たちは困難に直面するのだが、その扱いは生ぬるい。いわば“想定の範囲内”である。そもそも、フランツはあまり感情移入出来ないキャラクターだ。あまり恵まれない境遇にあることは分かるのだが、その内面が突っ込んで描かれない。そして、肝心のフロイトのアドバイスが全然大したものだと思えない。年長者ならば誰だって言えることばかりだ。

 斯様に映画は要領を得ないが、冒頭の“水中シーン”をはじめ、映像表現には力がこもっている。荒涼としたウィーンの町並みや、この世のものとも思えない実家およびその周辺の風景描写など、作り手が得意満面でカメラを回しているのが分かる。しかし、映画としてはそれが完全に“浮いて”いるのだ。ヘンにアーティスティック路線に色目を使うより、真っ当な歴史ドラマにした方が求心力が発揮出来たはずだ。

 フランツ役のジーモン・モルツェは大して印象に残らず。フロイト役に2019年に世を去ったブルーノ・ガンツが起用されているが、存在感はあるもののドラマの素材としては昇華されていない。ニコラウス・ライトナーの演出はアマチュア臭がして感心せず、個人的には観る必要の無かった映画だ。

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