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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「君が世界のはじまり」

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 最近「のぼる小寺さん」や「アルプススタンドのはしの方」といった良質の学園ドラマを堪能出来て嬉しく思っていた矢先、こんなにも低レベルのシャシンに遭遇してしまい、大いに気分を害した。とにかく、本作はまるで“映画”になっていないのだ。単に思い付きだけで撮られたようで、全てが素人臭く、観るに堪えない。

 大阪の下町に住む高校2年生の縁は、無為で張り合いのない日々を送っていた。せいぜい、親友の琴子の多彩な男関係を聞いて苦笑するぐらいだ。同じ学校に通う女子学生の純は、母に家を出て行かれ、その場を取り繕うばかりの父にウンザリしていた。そんな純が放課後に立ち寄ったショッピングモールで、東京から転校してきた伊尾と会い、そのまま懇ろな仲になる。ある日、夜遅くまでショッピングモールで過ごしていた縁とサッカー部キャプテンの岡田、琴子の彼氏のナリヒラ、そして純と伊尾の5人は、突然の大雨で家に帰れなくなり、そこで夜を明かすことにする。



 冒頭、父親を殺した男子高校生が逮捕されるというニュースが流れるが、それが登場人物の中の誰なのかといった趣向は、一切考慮されない。文字通り、取って付けたようなモチーフのまま終わる。縁たちを取り巻く環境は、まあそれなりにシビアなのだろうが、いずれも表面的に扱われるのみだ。

 全編に溢れる説明的なセリフと、奇を衒ったようなショット。ワザとらしいシチュエーションで、これまたワザとらしい動きをキャストにさせるという、いわば自己満足的な展開の連続。どのキャラクターにも、まったく感情移入出来ない。ブルーハーツの楽曲をネタとして取り上げているが、その使われ方が観ていて恥ずかしくなるほど下手だ。5人が夜中に“疑似ライブ”をするくだりなど、そのノリの悪さに目も当てられなかった。

 さらに、大阪を舞台にしているにも関わらず、大阪弁がまったくサマになっていない。そもそも、大阪っぽい雰囲気が希薄だ。原作と演出を担当しているふくだももこは大阪出身なのに、斯様な体たらくなのは、本人に映画製作のスキルが無いからだろう。映画専門学校の学生でも、もっとマシなものを撮ると思う。

 若手出演者の中で知っているのは縁に扮する松本穂香と琴子役の中田青渚ぐらいで、彼女たちにしてもロクなパフォーマンスをさせてもらっていない。あとの連中は名前も覚えたくないほど印象が希薄。エンディングタイトルに被って流れる松本のアカペラ歌唱も、さほど意味があるとは思えない。

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