(原題:THE PEANUT BUTTER FALCON)共通性を指摘されるであろう、トラヴィス・ファイン監督の「チョコレートドーナツ」(2012年)よりは良い出来だ。だが、飛び抜けて上質ではない。有り体に言えば“中の上”というところか。やはり、劇映画としてはこの題材を扱うことはハードルが高いのだと思う。
ジョージア州サバンナにある養護施設で暮らすダウン症の青年ザックは、子供の頃からプロレスが好きで、いつか憧れの悪役レスラーが経営する養成学校に入ることを夢見ている。そのため、施設を脱出する機会をいつも窺っていた。そしてある日、同室のカール老人の助けを得て脱走に成功。そしてひょんなことから漁師のタイラーと出会う。タイラーはしっかり者の兄を亡くしてから自暴自棄になり、漁師仲間の仕事を妨害して追われる身になっていた。いつしか意気投合した2人は、レスラー養成所のあるノースカロライナ州へと向かう。養護施設のスタッフであるエレノアは何とか2人に追いつくが、成り行き上、期限付きで彼らと行動を共にする。
訳ありの3人が旅をするハメになるというロードムービーの設定は盤石で、舞台になるアメリカ南部の風情も捨てがたい。二転三転する筋書きは飽きさせないし、出来過ぎと思われがちな終盤の処理も観ていて決して悪い気はしない。とはいえ、無理筋のプロットも散見されて評価するのを躊躇わせるのも確かだ。
タイラーは劇中では“活躍”するものの、いくら兄を失ったことでヤケになっていたとはいえ、やったことは窃盗と器物損壊だ。そのため感情移入しにくい。エレノアはザックを施設に引き戻す手段を失ってしまうが、だからといって“前科者”のタイラーに付いていくのは理解しがたい。ザックに関しては、果たしてこの行程をこなせるのかハラハラしてしまう。
そもそも、ザックが施設を抜け出すくだりで、段取りの悪さからパンツ一枚で外を走り回る様子からして実に危うい。ハッキリ言って、ダウン症患者でなければならない理由があまりない。別の“重い境遇”を背負ったキャラクターを出した方がスンナリドラマが進むのではないか。
ダウン症患者に限らず、知的なハンデのある者を物語の主軸に据えるのは難しいと思う。なぜなら、映画として内面を掘り起こすことが容易ではないからだ。「チョコレートドーナツ」だけではなく、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の「八日目」(96年)もその轍を踏んでおり、上手くいっていない。
とはいえ、ザック役のザック・ゴッツァーゲンはイイ味を出しており、タイラーに扮するシャイア・ラブーフも(何やら彼自身の素行の悪さを反映しているような役柄だが ^^;)好演だ。エレノアを演じるダコタ・ジョンソンは「サスペリア」(2018年)とは打って変わって、とても魅力的に撮られている。くれぐれも私生活で母親(メラニー・グリフィス)のマネをせず、真っ当に女優業に励んで欲しい。
ジョージア州サバンナにある養護施設で暮らすダウン症の青年ザックは、子供の頃からプロレスが好きで、いつか憧れの悪役レスラーが経営する養成学校に入ることを夢見ている。そのため、施設を脱出する機会をいつも窺っていた。そしてある日、同室のカール老人の助けを得て脱走に成功。そしてひょんなことから漁師のタイラーと出会う。タイラーはしっかり者の兄を亡くしてから自暴自棄になり、漁師仲間の仕事を妨害して追われる身になっていた。いつしか意気投合した2人は、レスラー養成所のあるノースカロライナ州へと向かう。養護施設のスタッフであるエレノアは何とか2人に追いつくが、成り行き上、期限付きで彼らと行動を共にする。
訳ありの3人が旅をするハメになるというロードムービーの設定は盤石で、舞台になるアメリカ南部の風情も捨てがたい。二転三転する筋書きは飽きさせないし、出来過ぎと思われがちな終盤の処理も観ていて決して悪い気はしない。とはいえ、無理筋のプロットも散見されて評価するのを躊躇わせるのも確かだ。
タイラーは劇中では“活躍”するものの、いくら兄を失ったことでヤケになっていたとはいえ、やったことは窃盗と器物損壊だ。そのため感情移入しにくい。エレノアはザックを施設に引き戻す手段を失ってしまうが、だからといって“前科者”のタイラーに付いていくのは理解しがたい。ザックに関しては、果たしてこの行程をこなせるのかハラハラしてしまう。
そもそも、ザックが施設を抜け出すくだりで、段取りの悪さからパンツ一枚で外を走り回る様子からして実に危うい。ハッキリ言って、ダウン症患者でなければならない理由があまりない。別の“重い境遇”を背負ったキャラクターを出した方がスンナリドラマが進むのではないか。
ダウン症患者に限らず、知的なハンデのある者を物語の主軸に据えるのは難しいと思う。なぜなら、映画として内面を掘り起こすことが容易ではないからだ。「チョコレートドーナツ」だけではなく、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の「八日目」(96年)もその轍を踏んでおり、上手くいっていない。
とはいえ、ザック役のザック・ゴッツァーゲンはイイ味を出しており、タイラーに扮するシャイア・ラブーフも(何やら彼自身の素行の悪さを反映しているような役柄だが ^^;)好演だ。エレノアを演じるダコタ・ジョンソンは「サスペリア」(2018年)とは打って変わって、とても魅力的に撮られている。くれぐれも私生活で母親(メラニー・グリフィス)のマネをせず、真っ当に女優業に励んで欲しい。