2008年設立の新興ブランドNmodeが今年(2019年)リリースしたプリメインアンプX-PM7MKIIを聴くことが出来たので、リポートしたい。前作のX-PM7も発売時に試聴したことがあり、かなり良い印象を持ったことを覚えている。あれから約4年が経ち、どのような展開に相成ったのか、聴く前は大いに興味をあった。
外観と寸法はほとんど変わっていないが、今回新たに前面パネルに数字が表示されるようになった。これはクロック周波数をあらわしており、外部クロックの併用により音質アップが期待できるという、デジタルアンプらしい仕様がフィーチャーされている。また、リモコンが使用可能になったのは大きな進歩だ。リモコン自体はかなり簡易なものだが、無いよりあった方が断然良い。
繋げたスピーカーはDIATONEのDS-4NB70およびDynaudia社の複数のモデルだ。聴いたソフトはクラシックとポップスおよびジャズで、ほぼオールジャンルをカバー。音量はフル・ヴォリュームに近いレベルまで上げることもあったが、おおむね家庭内で鳴らす程度に留めた。
実際の音だが、一聴してこれはかなりの優れものだと感じた。とにかく高いレベルでの解像度と情報量が実現している。特に管弦楽曲の再生では、各音像が混濁することはない。それでいて特定周波数帯域での不自然な強調感や、いわゆる(見かけの)ハイファイ度を上げるための音の硬さとは無縁で、聴感上の特性はまさにフラットだ。
また前作のX-PM7に比べ、出力が17W×2から25W×2(いずれも8Ω)にアップしていることもあり、駆動力は向上。これならば低能率のスピーカーでも、音圧不足を感じることは無いだろう。デジタルアンプに付き物のノイズは、かなり抑え込まれている。それから消費電力が小さいこともセールスポイントになると思われる。
参考のために、他社のプリメインアンプとも聴き比べてみた。具体的にはLUXMANとYAMAHAの製品だ。結果、Nmodeの圧勝である。特にLUXMANはX-PM7MKIIよりも上位の価格帯のモデルだったが、音圧とヴォーカルの温度感こそ先行するものの、分解能や聴感上のレンジの広さに関してはとてもNmode製品には及ばない。
もちろん、X-PM7MKIIは誰にでも奨められるというわけではない。ヴォリュームと入力切替しかないフロントパネルは、多機能を要求するユーザーには不向きだ。メーターが付いていないとアンプとは認めないというマニアも、お呼びではない(笑)。そして何より、アンプで“音を作っていこう”と思っている者、つまりアンプに独自の“音の着色(個性)”を期待しているオーディオファンにとっては、完全に埒外のモデルだ。
しかし、アンプに(見た目を含めた)必要以上の存在感を求めないユーザーには、十分に購入候補に成り得る。X-PM7MKIIは見掛けは素っ気ないが、パネルの質感は高い。いくら大きくて重くても、安くはない製品に平気で樹脂製のヴォリュームつまみを採用するような某メーカー等とは一線を画している。
あと関係ないが、Nmodeをプロデュースしている株式会社リリックは、2014年に創業地の鹿児島県から社長交代に伴い福岡県糟屋郡に本社を移転しているが、同じ福岡県民として、何となく親しみが持てる(笑)。今後とも質の高い商品をリリースして欲しいものだ。