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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「必殺4 恨みはらします」

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 87年松竹作品。映画版の「必殺」シリーズをすべて観ているわけではないが、おそらく本作が一番出来が良いと思われる。さすがテレビシリーズ第一作「必殺仕掛人」の第1話と第2話を手掛けた深作欣二監督だけあって、見せ場の連続で息つく暇もない。また当時の世相(地上げ屋の横行等)を反映したストーリー展開も興味深い。

 中村主水が勤務する町奉行所で、見習い与力の安田小兵衛が町奉行の長尾監物に切りつける事件が発生。主水はうっかり現場に関わってしまい、減給処分の憂き目にあう。後任の奉行には、二枚目だがどこかミステリアスな雰囲気のある奥田右京亮が就任。



 一方、主水の行きつけの居酒屋のある長屋では、旗本愚連隊が乱入して狼藉の限りを尽くしていた。その際に愚連隊の一人が乗っていた馬が暴走し、狼人の弥兵衛が事故死する。弥兵衛の娘のお弓は、仕事人たちに愚連隊の始末を依頼。だが主水は、この事件の裏に大きな陰謀があることを嗅ぎ付ける。

 スローモーションを活かしたオープニングの奉行所の刃傷沙汰から、一気に惹きつけられる。愚連隊の突入と逃げ惑う住民たちをダイナミックにとらえたモブシーン、華麗な殺陣とアイデアに満ちた“仕事”の場面など、ヴィジュアル面で盛り上がるポイントが満載。さらには、長屋の土地をめぐる利権争いや、右京亮の過去にまつわる因縁話といったプロットも上手く機能し、違和感はほとんどない。

 レギュラーの仕事人たちの他にも別の実行グループがいて、敵方にもかなりの遣い手がおり、これらが入り乱れて活劇を繰り広げる様子は壮観だ。人を食ったような決着の付け方にも、笑いながら納得してしまった。深作御大の演出は賑々しくもダイナミックで、血糊は多いのに陰惨さを感じさせず、娯楽映画の王道路線に徹している。

 藤田まことをはじめとする“いつものメンバー”の他にも、真田広之に千葉真一、倍賞美津子、堤大二郎、石橋蓮司、成田三樹夫、笹野高史、蟹江敬三、室田日出男、岸田今日子など、配役はかなり豪華。しかもそれらにオーバーアクトすれすれの芝居をさせて、すべてサマになるという芸当にも唸るばかり。平尾昌晃のお馴染みの音楽、陰影に富んだ石原興によるカメラワークも言うことなしだ。

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