(原題:GODZILLA:KING OF THE MONSTERS )お馴染みの怪獣たちが取っ組み合いをすること自体に価値を見出す観客(実は、私もその一人だ ^^;)ならば楽しめるだろう。当然、それ以外の者はお呼びではない。米国における興収がアメコミの映画化作品よりも低調であるのも、それと無関係ではあるまい。
ゴジラとムートーの戦いから5年が経ち、以前から怪獣の調査を行ってきた秘密機関“モナーク”は政府や国連から怪獣をコントロールできなかったことに関して激しい追及を受けていた。それでも“モナーク”は世界各地に眠る怪獣の監視を続けていたが、その中の一つである中国の雲南省にある基地の地下では、モスラの幼虫が孵化していた。そこへ環境テロリストのアラン・ジョナ率いるテロ部隊が基地に乱入。エマ・ラッセル博士と娘のマディソンを拉致し、怪獣と交信する装置“オルカ”も強奪されてしまう。
ジョナの狙いは“オルカ”を使って南極に眠る“モンスター・ゼロ”ことキングギドラをよみがえらせることだ。“モナーク”の幹部である芹沢猪四郎博士は、エマの夫で科学者のマークに協力を要請するが、その間にキングギドラは覚醒。かつてギドラと覇を争ったゴジラが戦いを挑む。さらには、メキシコの火山島ではラドンが出現。こうして怪獣バトル・ロワイアルがワールドワイドに展開する。
バトル場面が夜間中心であるのは不満だが、それでも往年の東宝の怪獣オールスターズが画面狭しと暴れ回るのは壮観だ。何よりかつての「ゴジラVSキングギドラ」(91年)みたいにギドラ氏が放射能を浴びた小動物の化身ではなく、ちゃんと“宇宙からの侵略者”という設定に戻っているのが嬉しい。
しかし、人間側のドラマはあまりにもお粗末だ。ジョナの目的はハッキリとせず、エマが敵に寝返った理由も分からない。芹沢博士の言動は元祖「ゴジラ」(1954年)を下敷きにしているとはいえ、結局は不自然に終わる。極めつけは最後のボストンでの戦いのシーンで、マークとエマそしてマディソンの一家の行動は支離滅裂。事態をややこしくするだけだ。
マイケル・ドハティの演出は深みは無いがテンポがある。カイル・チャンドラーにヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、渡辺謙、チャン・ツィイーといったキャストもまあ良いだろう。もちろん続編は作られるのだが、困ったのは四大怪獣以外の面々の造型がイマイチなこと。またムートー(前作とは別個体)なんか出すよりも、昔の東宝怪獣映画からもっとキャラクターを“引用”してほしいものだ。
とはいえ、伊福部昭による“ゴジラのテーマ”はフィーチャーされるし、古関裕而作曲の“モスラの歌”も流れるし、ブルー・オイスター・カルトの“ゴジラ”も鳴り響く。その点は良かった。