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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「主戦場」

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 (原題:SHUSENJO:THE MAIN BATTLEGROUND OF THE COMFORT WOMEN ISSUE )つまらない映画だ。断っておくが、本作が左派のプロパガンダ映画だからケシカラン!・・・・などというイデオロギー的な視点で批判しているわけでは断じてない。作者のスタンスが右だろうが左だろうが斜め上だろうが(笑)、そんなことはどうでもいいい。要は映画として面白いかどうかだ。その点では本作はまったく評価できない。とにかく出来が悪すぎる。

 日本と韓国の間でいまだに燻っている従軍慰安婦問題を扱ったドキュメンタリーで、映画の前半は左右それぞれの識者のコメントが要領良く並べられている(ように見える)。ところが中盤あたりから話が慰安婦像の設置をめぐる関係者同士の確執に推移し、果ては日本の政治家の靖国参拝とか、天皇の戦争責任とか、南京事件とか、日本会議がどうしたとか、肝心の慰安婦問題とは直接関係のないモチーフの羅列に終始する。

 つまりは映画として主題の絞り込みが成されておらず、総花的な作者自身の“つぶやき”が全面展開されるだけなのだ。最後に取って付けたように元慰安婦のコメントが流されるが、時すでに遅しである。

 そもそも、前半の論客たちの意見の応酬に関しても、最初に右派のコメントが流され、次に左派の言い分が挿入されるが、それに対する右派の再反論は無い。要するに当初から左派の主張が正しいものとして製作されているわけだが、問題はそのことが観る側に“見透かされている”ことである。ネタの割れた映画ほど面白くないものはないのだ。

 さらには自身の言い分を無理矢理押し切るほどの映画的手法も不在。我々が知らなかったような“新たな事実”の提示もされていない。いくらドキュメンタリーとはいえ、カネ取って劇場公開する以上、エンタテインメント性に乏しければ何もならない。シュプレヒコールの連呼がしたいのならば、ヨソでやってくれと言うしかない。

 また“日本会議は神道系で、それが政府とつるんでいるから問題だ”とか“日本会議は大日本帝国憲法の復活を企んでいる”とかいう、明らかな事実誤認と思われる箇所があるのも愉快になれない。監督は米国のミキ・デザキなる人物(なぜか日系)だが、映画作家としての腕前は無いと言わざるを得ない。

 なお、私個人としては慰安婦問題に関しては“当時の日本政府及び軍当局が、慰安婦を強制徴用した事実も証拠も存在しない”という一点をもって話は終わりにしなければならないと思う。人権問題と政治問題を混同したような形でいたずらに引きずっても、徒労に終わるだけだ。

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