(原題:STAN & OLLIE)悪くはないが、どうも薄味だ。これはひとえに題材となった往年のお笑いコンビ“ローレル&ハーディ”の芸が古いからだと思う。
彼らはサイレント期からハリウッドで活躍していたのだが、同時期のチャップリンやキートンおよびロイドらが繰り出していたネタが今見ても十分面白いのに比べて、“ローレル&ハーディ”のパフォーマンスはかなり“ぬるい”。劇中で紹介される映画の一部分はもちろん、ネット上で鑑賞可能な彼らの出演作をチェックしても、ほとんど笑えない。ならばどうして現時点で彼らの伝記映画を撮ったのかという、その背景が見えないのが辛いところだ。
1953年、かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだったスタン・ローレルとオリバー・ハーディのコンビは戦後はすっかり落ち目になっていたが、復活を期してイギリスおよびアイルランドにツアーに出かける。当初は待遇が悪く、客足も全く伸びなかったのだが、なりふり構わないPR活動のおかげで次第にファンを取り戻していく。ところがある日、口論をきっかけに2人はコンビ解散の危機に陥る。しかもオリバーは持病の心疾患が悪化。ツアー続行も難しくなる。
往時の勢いを失った芸人の悲哀はよく出ていたし、2人のそれぞれの嫁さんのキャラクターも面白い。しかしながら、ジョン・S・ベアードの演出は淡白だ。おかげで意外性のない型通りの展開になってしまった。加えて、冒頭に書いた通り“ローレル&ハーディ”の持ちネタは凡庸であるため、クライマックスの最後のステージに至っても盛り上がりに欠ける。2人の人気が陰りを見せ始めたのは敏腕プロデューサーのハル・ローチとケンカ別れしてからだが、映画ではそのあたりの描写は軽く流していることもマイナス要因だ。
とはいえ、主役のスティーヴ・クーガンとジョン・C・ライリーの演技は実に達者である。シャーリー・ヘンダーソンにニナ・アリアンダ、ルーファス・ジョーンズら脇のキャストも万全。そしてガイ・スペランザによる衣装デザインは素晴らしく、どれも当時の雰囲気を良く出していながら、上品でハイ・クォリィティだ。音楽担当のロルフ・ケント、撮影担当のローリー・ローズ、いずれも的確な仕事をしている。