(原題:AVENGERS:ENDGAME)見事な出来映えで、3時間もの上映時間がまったく長く感じられなかった。もっとも、細かいところを見れば辻褄の合わない箇所が散見される。しかしそれでも“11年間にも及ぶシリーズを何とか完結させよう。それにはこの手しかない!”という作者の気迫は、少々の瑕疵など吹き飛ばしてしまう。また総花的な展開のように見せて、最後には個人のストーリーに収斂させる手法にも感服だ。本年度のアメリカ映画の収穫である。
前作「インフィニティ・ウォー」において強敵サノスにより全宇宙の生命の半分が消し去られてしまい、アイアンマンことトニー・スタークは地球への帰還も覚束ない有様だ。残ったメンバーはサノスを急襲して仕留めるが、前回のカタストロフの原因であったインフィニティ・ストーンはすでに存在しておらず、去って行った者達が戻ることはなかった。
それから5年後、アントマンことスコット・ラングは、量子力学を用いたタイムトラベルを提案する。過去に戻ってサノスがストーンを手に入れる前に回収しようという算段だ。アベンジャーズは3つのグループに分かれて別の時代に飛んでストーンを集めるが、それはまた“生前のサノス”を召喚することにも繋がるのだった。
タイムパラドックスに関する考察は十分とは言えないが、アンソニー&ジョー・ルッソの演出は淀みがなく、次から次へと見せ場が繰り出され、そんな欠点はどうでもよくなってくる。クライマックスのバトルシーンなど、手に汗握るほどだ。
しかし、印象的なのは主要キャラクターの人間ドラマが十分に掘り下げられていることだ。ホークアイことクリント・バートンとブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフとの関係性も見応えあるが、それより感心したのはトニー・スタークとキャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースの扱いだ。2人は、過去において縁の深い人物と“再会”し、それぞれの人生に向き合う。そして終盤には自身の生き方を決める。結局、この長いシリーズはトニーとスティーヴの物語であったことが分かり、まさに感無量である。
ロバート・ダウニーJr.にクリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナーら御馴染みの面々に加え、ロバート・レッドフォードやナタリー・ポートマン、ティルダ・スウィントンなど、過去のシリーズ作品のキャラクターが顔を見せるのも実に嬉しい。一応、本作をもってマーベル・シネマティック・ユニバースも区切りが付いたが、アメコミの世界は複数のステージが存在するので、また新たな展開を見せるのだろう。楽しみに待ちたい。