(原題:L'Ange)82年作品。同名の映画は複数あるが、本作はフランス製の実験映画だ。しかしながら、いくら実験的なシャシンとはいえ、映画は映画だ。どれだけ観客にアピールするか、それが大事である。たとえば作者の心象風景か何かを映し出しただけで、娯楽性のカケラもないシロモノなど、評価するに値しない。ならばこの映画はどうか。順を追って感想を書いていこう。
オムニバス形式の作品だ。まず画面に映し出されるのは、闇の中にストップ・モーションで現れる人影。カメラはとある部屋の入り口に進んでゆく。そこには天井から吊された人形があり、そこに仮面を被った騎士がサーベルでその人形に斬りかかる。なかなか過激なモチーフだが、同じフィルムを早回しや逆回転させているとはいえ、約10分間も繰り返すだけなので、いい加減飽きる。
次の場面は、召使いの女がミルク壺を持って主人の元に運ぶくだりである。壺はテーブルから落ちて粉々に壊れて床にミルクが飛び散る。これを何回も何回も繰り返す。前のパートに比べると日常的な描写だと言えるが、必要以上に反復されると、そこは非日常と化す。かなり不気味で面白い。
3番目はケラケラ笑いながら入浴している男が出てくる。浴槽以外は何も無い白い部屋に一人きりだ。ひょうきんな笑い声と水の音をデフォルメしたSEが良い。前章と併せてこの映画のハイライトだろう。次は傾いた部屋の内部。ベッドに横たわっている男は、やがて顔を洗い外出する。行き先である図書館では、同じ顔をした図書館員がせわしなく働く。ただ、それ以降はシュールな場面が出てくるわけではなく、何となく終わってしまう。
ガラスケースの中に1人の裸女がいる。こん棒や丸太を手にした男達が突進する。ケースは割られ、中から煙や水滴のような物質が出てきてあたりに散乱する。銅版画のような映像が興味深く、退屈させない。そして最後のパートは、長い天国(?)への階段を上っていく人々の一枚のスチール写真にあらゆる角度から光をあてて、それを繋げたものだ。バックには強烈な現代音楽が流れる。なかなかハデだが、映画の締めくくりとしては物足りない。もうちょっと撮り方に変化を付けて欲しかった。
全体としては不満な点はあるが、観る価値はあると思う。美術的には優れているし、楽しめるシーンもある。監督はフランスを代表する実験映画作家パトリック・ボカノウスキー。なお、当地では映画館では公開されず、私は市民会館の特別上映で観ている。
オムニバス形式の作品だ。まず画面に映し出されるのは、闇の中にストップ・モーションで現れる人影。カメラはとある部屋の入り口に進んでゆく。そこには天井から吊された人形があり、そこに仮面を被った騎士がサーベルでその人形に斬りかかる。なかなか過激なモチーフだが、同じフィルムを早回しや逆回転させているとはいえ、約10分間も繰り返すだけなので、いい加減飽きる。
次の場面は、召使いの女がミルク壺を持って主人の元に運ぶくだりである。壺はテーブルから落ちて粉々に壊れて床にミルクが飛び散る。これを何回も何回も繰り返す。前のパートに比べると日常的な描写だと言えるが、必要以上に反復されると、そこは非日常と化す。かなり不気味で面白い。
3番目はケラケラ笑いながら入浴している男が出てくる。浴槽以外は何も無い白い部屋に一人きりだ。ひょうきんな笑い声と水の音をデフォルメしたSEが良い。前章と併せてこの映画のハイライトだろう。次は傾いた部屋の内部。ベッドに横たわっている男は、やがて顔を洗い外出する。行き先である図書館では、同じ顔をした図書館員がせわしなく働く。ただ、それ以降はシュールな場面が出てくるわけではなく、何となく終わってしまう。
ガラスケースの中に1人の裸女がいる。こん棒や丸太を手にした男達が突進する。ケースは割られ、中から煙や水滴のような物質が出てきてあたりに散乱する。銅版画のような映像が興味深く、退屈させない。そして最後のパートは、長い天国(?)への階段を上っていく人々の一枚のスチール写真にあらゆる角度から光をあてて、それを繋げたものだ。バックには強烈な現代音楽が流れる。なかなかハデだが、映画の締めくくりとしては物足りない。もうちょっと撮り方に変化を付けて欲しかった。
全体としては不満な点はあるが、観る価値はあると思う。美術的には優れているし、楽しめるシーンもある。監督はフランスを代表する実験映画作家パトリック・ボカノウスキー。なお、当地では映画館では公開されず、私は市民会館の特別上映で観ている。