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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「まく子」

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 家族ドラマかと思って観ていたら、途中からおかしな展開になり、果ては私が最も苦手とするファンタジー映画へと変貌。これでは全く評価出来ない。いったい何のために撮られたのか、どういう観客を対象としたのか、まるで合点がいかぬままエンドロールを迎える。観て損したというのが正直なところだ。

 岐阜県の山あいにある小さな温泉町の旅館の息子サトシは小学5年生。最近は自分の身体の変化に悩んでおり、また浮気ばかりしている父親の光一に対して愉快ならざる気持ちを抱いていた。ある日、サトシのクラスにコズエという女の子が転校してくる。しかも彼女の母親は、サトシの家が経営する旅館で住み込みで働き始めるのだった。コズエはサトシに接近し、その浮き世離れした言動で彼を困惑させる。それでもサトシはやがて彼女を憎からず思うようになるが、あるときコズエは“自分と母親は別の星から来た”と告白するのだった。直木賞作家・西加奈子の同名小説の映画化だ。

 別に、謎の少女がエイリアンだったというモチーフを挿入するのはケシカランと言いたいのではない。困ったのはその必然性が感じられないことだ。コズエはよく楽しそうに枯葉などをあたりにまき散らすが、その意味は一応彼女の口から語られるものの、まるでピン来ない。

 作者は“異星人だから突飛な行動を取るものだ”という御題目で押し切っているように見える。言い換えれば、コズエのおかしな行動をフォローしきれなくなったから、SFファンタジーもどきに走ったということだろう。コズエが地球に来た目的がハッキリと語られないのも、まあ当然か。

 それにしても、サトシが第二次性徴に戸惑うあたりの描写のワザとらしさは目も当てられない。監督が女流の鶴岡慧子だからということは言いたくないが、まるで頭の中で考えただけの無遠慮なモチーフばかりでウンザリする。この町の名物である“サイセイ祭り”というのは、ハッキリ言って珍妙。さらに誰かが旅館に火を付けてどうのこうのというあたりは、作劇が完全に破綻している。

 コズエを演じる新音はとても小学生には見えず(事実、彼女はすでに中学生である)、須藤理彩やつみきみほ、根岸季衣、小倉久寛といった大人のキャストは機能していない。光一役の草なぎ剛はサトシにおにぎりを作ってやるシーンを除けば、まるで精彩が無い。温泉町という設定をほとんど活かしていない平板な映像と、これまた平板な音楽が画面を盛り下げる。つまらない映画だ。

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