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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「メリー・ポピンズ リターンズ」

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 (原題:MARY POPPINS RETURNS)製作意図がまったく分からない映画だ。何しろ前作の公開は64年だ。あれから50年以上経って、どうして“続編”を撮る必要があったのか。パート2という設定ならば、ミュージカル映画史上に残る前回の作品世界を超越することが出来ない。いわば、映画が完成する前から失敗することを運命付けられていたと言える。百歩譲って、最近は良い企画が出てこないので大昔のネタを引っ張り出したというのならば、“続編”ではなくリメイクにすべきだった。

 前作から20年経った大恐慌時代のロンドン。バンクス家の長男マイケルは画家になったが、それだけでは食えないので、かつて父や祖父が働いていたフィデリティ銀行で非正規の仕事に就いていた。子供は3人だが、妻を亡くしたばかりで家事は行き届かない。さらに悪いことに、融資の返済期限切れで家を追い出されそうになる。そこに風に乗って現れたのがメリー・ポピンズで、再び子供たちの面倒を見ることになる。

 困ったことに、出てくるモチーフは前回と一緒だ。実写とアニメーションとのコラボレーションも、点灯夫たち(前回は煙突掃除夫だったが ^^;)の大々的なダンスシーンも、クライマックスの銀行でのドタバタも、すべてがパート1からの流用だ。CGも無かった時代で驚くべき映像のスペクタクルを見せた前作に比べると、今なら技術面で軽くこなせるような画面処理を同じルーティンでやっているというのは、どう考えてもスマートではない。

 そもそも、前作とは違って子供たちは最初から“いい子”だし、あえてメリー・ポピンズが出てくる必要は無いのである。ハンクス家の窮状を直接的に救うわけでもなく、いったい彼女は何しにやって来たのだろうか。さらに、今回使われている楽曲は全然魅力が無い。「2ペンスを鳩に」や「チム・チム・チェリー」といったスタンダード・ナンバーが散りばめられた前作の足元にも及ばないのだ。

 以上、“前作と比べてどうのこうの”という立場で書いてみたが、ならば本作単品として楽しめるかというと、それも覚束ない。なぜなら、キャラクターやストーリーの設定が前作を踏襲しているため、パート1を観ていなければ全貌が掴めないし、本作に対峙するためには前作をチェックするしかないからだ。そうすると、誰だって前作と比較した上での感想しか述べられない。冒頭で“続編を作る意味が無い”と書いたのは、そういうことなのだ。

 ロブ・マーシャルの演出はキレが悪く、平板だ。主演のエミリー・ブラントは頑張ってはいるが、パート1のジュリー・アンドリュースと比較するのは酷である。リン=マニュエル・ミランダやベン・ウィショーといったキャストもパッとせず、メリル・ストリープはオーバーアクト気味だし、コリン・ファースは手持ちぶさたで、良かったのはディック・ヴァン・ダイクが前回に引き続き顔を見せてくれたことぐらいだ。

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