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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「アリー スター誕生」

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 (原題:A STAR IS BORN)あまり面白いとは思えない。過去何度も映画化されたネタだが、現時点でリメイクする意味が見出せない。アメリカでは主演のレディー・ガガの“復活劇”とシンクロしたヒロイン像が大いにウケたということらしい。だが、彼女にそれほどの思い入れが無い観客にとっては、まるでピンと来ないのでないか。

 売れっ子のロック・シンガーであるジャクソン・メインは、カリフォルニア州でのコンサートの後に立ち寄ったバーで、音楽の才能を持つ若い女と出会う。彼女はバーのウェイトレスのアリーで、歌が上手いだけではなく作曲もするという。アリーに惚れ込んだジャクソンは彼女をツアーに同行させ、さらにステージに上げて歌わせた。彼女のパフォーマンスは観客から喝采を浴び、瞬く間にスターダムにのし上がってゆく。ジャクソンとの結婚も果たし順風満帆に見えたアリーだが、一方でジャクソンは酒とドラッグに溺れ、第一線から退くことになる。

 物語の中心はアリーであるはずだが、演じるガガは映画初出演で、内面的な表現が心許ないのは当然だろう。最初から才能豊かで、大した苦労も無くブレイクし、グラミー賞も取ってしまう。これでは感情移入はしにくい。

 どちらかというと映画の主眼はジャクソンの側に寄っているのだが、出てきた時から冴えないオッサンであり、歌は達者であるものの、いわゆる“華”が無い。どうしてアリーが本気で惚れたのか、よく分からないのだ。ジャクソンと年の離れた兄との関係性はそれを主体的に描けば面白そうだが、画面の真ん中にアリーが鎮座している関係上、あまり効果的に扱われていない。

 そして最も違和感を覚えたのが、ジャクソンがやっている音楽である。古いタイプのカントリー・ロックであり、こういうサウンドが今でも一定の需要があることは承知しているが、あまりにも現在のメインストリームからは離れているのではないか。ここはジャクソンをラッパーかEDMのDJあたりに設定した方が、説得力があったと思われる。また、当初はジャクソンの音楽に準じたナンバーをやっていたアリーが、簡単にダンス・ミュージックに鞍替えしてしまうのも愉快になれない。

 監督でジャクソン役として出演もしているブラッドリー・クーパーは健闘していたとは思うが、ここ一番の訴求力には欠ける。76年のフランク・ピアソン監督版も観ているので結末は分かっていたが、そのことを差し引いてもラストは盛り上がらない。何でも、当初はビヨンセが主演する予定だったという話だ。どちらかというと、そっちの方がサマになっていたような気がする。

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