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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ドリフト」

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 (原題:Drift )特別に出来の良い映画ではないが、それなりにソツなく楽しませてくれる。またサーフィンを題材にしているだけあって、喚起力に富んだ映像は要チェックだ。

 60年代後半、シドニーに住んでいたアンディとジミーの幼い兄弟は、母親に連れられて暴力的な父親のもとから逃げ出し、オーストラリア西海岸の小さな街に移り住む。70年代に入り、成長した二人はサーフィンを楽しみながらも平凡な生活を送っていたが、ある日流れ者のような生活を送るカメラマンのJBと出会う。

 JBの自由な生き方に影響を受け、自身の夢を実現させることが人生の醍醐味だと確信した二人は、一念発起してサーフショップを立ち上げる。しかし、何とか商売を軌道に乗せることができた矢先、有名プロを広告塔にした大手サーフィン用具メーカーが進出してきたり、ヤク中になった仲間がマフィアとのトラブルに巻き込まれる等、行く手に暗雲が立ちこめる。モーガン・オニールとベン・ノットの共同監督による、実話を元にした映画だ。

 冒頭、母親が眠りこけている父親の懐から車のキーを盗み出し、二人の子供と共に家を後にするシーンはなかなか印象的だ。主人公達が小さい頃に受けたトラウマが、その後の屈託の多い二人の生き方に何かと暗い影を落としていることを示している。このプロローグの部分だけがモノクロで撮られているのも効果的だ。そして、序盤で登場人物のバックグラウンドの描写を“固めて”しまえば、あとは多少展開が冗長でも大きな減点にはならない。

 二人が興したビジネスは山あり谷ありだが、ドラマ的には予想の範囲内だ。兄弟の友人がドラッグの取引に手を出して身を持ち崩すくだりが作劇のアクセントにはなっているが、さほどインパクトのある話とは思えない。それよりもJBとの関係性をもっと突っ込んで欲しかった。この頃の世相を浮き彫りにして、けっこう興味深い展開になったかもしれない。

 だが、本作のサーフィン・シーンは平板になりそうな中盤以降をキッチリと引き締める。押し寄せる壮大な波と、それに無謀にも挑むサーファー達。カメラワークはダイナミックで、息をもつかせない。

 主人公の兄弟を演じるのは、共にオーストラリア出身のマイルズ・ポラードとゼイヴィア・サミュエル。そんなにメジャーな人気を持つ俳優ではないが、けっこうナイーヴな演技を見せてくれて好感度が高い。ルックスも良いので、今後売れてくるかもしれない。ヒロイン役のレスリー=アン・ブラントも可愛い。JB役はサム・ワーシントンが担当しているが、存在感を買われての出馬だと思われ、役柄自体はあまり能動的ではないので少し残念だ。

 しかしまあ、こういう青春ドラマを見ていると、自分も若い時分に何かに熱中しておけば良かったと、つくづく思ったりする(笑)。どうも、何となく若い頃を過ごし、それから何となく年を重ね、将来は何となく老後を迎えるような気がしてならない。どう考えてもこのままでは面白くないので、今からでも熱中するものを探そうかと思っている今日この頃だ。

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