(原題:ANT-MAN AND THE WASP)前作を観ていないことを勘案しても、散漫でまとまりのない印象を受けるのは否めない。これはひとえに、物語の核になるモチーフがしっかりと捉えられていないことに尽きる。確固とした方向性が見えていない活劇映画など、あまり面白いとは思えない。
1987年、先代の“ワスプ”ことジャネット・ヴァン・ダインは核戦争を阻止するため限界まで身体を縮小し、超ミクロ領域に迷い込み行方不明になってしまう。夫のハンクは“アントマン”ことスコット・ラングが量子世界から帰還した事実を踏まえ、何とかジャネットを救おうと量子トンネルの研究を続ける。
ハンクと2代目“ワスプ”であるホープは、装置の部品を闇市のディーラーであるソニー・バーチから買い上げようとするが、逆にバーチは研究結果の横取りを画策。さらに、物質をすり抜ける怪人“ゴースト”が介入し、ハンクの研究ラボを丸ごと頂戴しようと暴れ始める。一方、「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」での一件により自宅軟禁中のスコットは、何とかホープ達に加勢するため、あらゆる“汚い手”を使って監視するFBIの目を潜り抜けようとする。
主人公達が相対する“敵”は、一応バーチとその組織及び“ゴースト”ということになるのだが、前者はどう見ても単なるチンピラ集団。さらに後者は行動規範がいま一つハッキリしない。いずれにしろ、どちらも絶対的で強大な悪玉ではないことは確かだ。これにジャネットを探すハンクの“冒険譚”が加わるが、そもそもどうして核ミサイルの中で消えたジャネットを違う場所から探すことができるのか不明である。
作者は“これら3つのパートを平行して描くことにより、映画が相乗的に盛り上がっていく”とでも踏んだのだろうが、それぞれのドラマの密度が低いので、3本まとめても作劇に芯が通らない。
ペイトン・リードの演出力は並であり、特筆されるものは見当たらない。目立つ箇所を強いて挙げれば、前半のバーチ一味と“ワスプ”の厨房でのバトルぐらいだ。ギャグも散りばめられているが、先日観た「デッドプール2」ほどの面白さは無し。
主役のポール・ラッドとエヴァンジェリン・リリーは“そこそこの演技”に終始。マイケル・ダグラスやミシェル・ファイファー、ローレンス・フィッシュバーンといった脇のベテランに負けている。なお、ラストには本作と「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」との関連性が示されるが、観ていて“おおっ、そうだったのか!”と合点が行くほどのインパクトには欠ける。