(原題:MISSION:IMPOSSIBLE FALLOUT)前作より落ちる。前々作と比べれば、もっと落ちる。何より、脚本が上等ではない。題材自体がマンネリで、それを凝ったストーリーで粉飾しようとしているが、結局は話がまとまらずに終わる。このシリーズ最長の2時間27分という上映時間を費やしていながら、この体たらくだ。
3つのプルトニウムが何者かに強奪されるという事件が発生。イーサン・ハントとIMFが事態の収拾に乗り出し、何とかプルトニウムを金銭取引によって回収する手筈を整える。しかし、そこに別のグループが乱入してプルトニウムを奪われてしまう。この事件の裏には、前回で壊滅させたはずの“シンジケート”の親玉が暗躍しており、手掛かりはジョン・ラークという正体不明の男の名前と、彼が接触するホワイト・ウィドウと名乗る怪しい女の存在だけ。
イーサン達は、プルトニウムを取り戻して世界同時核テロを阻止するという新たなミッションを受ける。だが、IMFをイマイチ信用していないCIA当局は、任務に手練れのエージェントであるウォーカーを同行させることを要求。傲慢な彼にイーサンは辟易するが、何とかミッションを成功させるために行動を共にする。
核兵器の材料が悪者の手に落ち、爆発までのタイムリミットが設定されていて・・・・という話は、今さら珍しくもない。IMFが孤立して、イーサン自身にも嫌疑が掛かる・・・・というモチーフも、過去に採用済のネタだ。かくも新味の無いメインプロットを観る者を退屈させずに最後まで引っ張るには、細部を精査して筋書きを練り上げなければならないが、これが全く評価出来ない。
序盤の、プルトニウムが3個入ったケースをめぐる攻防戦は、もう呆れるほどあっさりと敵に出し抜かれてしまう。加えて、展開される銃撃戦もやたら画面が暗くて誰が誰だか分からない。しかも、この“暗くて何が何だか分からない”という展開が後半にもリプライズされる。男子トイレでの格闘場面は段取りが悪すぎてシラケるし、柱や壁が身体がぶつかっただけで簡単に破壊されるシーンはギャグとしか思えない。
IMFと“シンジケート”との抗争であるはずが、なぜか仲介役の組織が出てきて、話を混乱させる。ラークと“シンジケート”のボスであるレーンの目的がハッキリしないし、それぞれの陣営がレーンの身柄の確保に固執する意味も、あまり無いように思える。そもそも、最初にプルトニウム奪った連中の正体さえ分からないのだ。さらに終盤の、イーサンの元女房が登場するくだりは必要ないだろう。
確かに主演のトム・クルーズは頑張っている。スタント無しで危険なアクションに挑む姿勢は大したものだ。だが、個々の活劇シーンには新しいアイデアは無い。トム御大には敢闘賞は贈られても、技能賞には縁が無いだろう。
ヘンリー・カヴィルやサイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、アレック・ボールドウィンといった脇のキャストも精彩を欠く。強いて印象的なキャストを挙げれば、ホワイト・ウィドウ役のヴァネッサ・カービーぐらいだ。監督は前回と同じクリストファー・マッカリーだが、本作では全然ピリッとしない。次回作がもしもあるのならば、もっとしっかりした脚本を用意して、タイトに仕上げて欲しいものだ。