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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「永遠と一日」

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 (英題:Eternity and a Day)98年ギリシア=フランス=イタリア合作。北ギリシアの港町のテサロニキに住む詩人のアレクサンドレは、重い病を抱えて翌日に入院することになった。おそらく帰っては来られないことを自覚し、彼は実質的な人生最後の一日を迎える。彼はまず3年前に世を去った妻のアンナが遺した手紙を届けるために、娘カテリナが住む町に赴く。そして彼はアルバニアから来た難民の少年と出会う。アレクサンドレは少年を送り帰そうと国境までやって来るが、彼は国境の向こうには行こうとしない。2人の一日限りの旅はまだ続く。

 「シテール島への船出」(84年)以降のテオ・アンゲロプロス監督作は、世評の高さとは裏腹にその求心力は低下する一方であった。特に「ユリシーズの瞳」(95年)にいたっては、自分一人だけを高みに置いたような“お客様的視点”が全編を覆い、愉快ならざる気分になったものだ。しかし、この作品は違った。



 もはや「アレキサンダー大王」(80年)以前のような、歴史の当事者たる切迫したスタンスは望むべくもないが、その代わりに作劇のベクトルをひたすら主人公の内面に向かわせ、より普遍的な共感を呼ぶ作品に仕上げている。しかも、不必要に上映時間を延ばさず(アンゲロプロス作品としては短めの124分だ)、文字通りストーリーを1日に限定し、テーマも「家族」「愛情」「郷愁」etc.といった誰でも分かるものにしている。この方向性は成功だ。

 余命いくばくもない老作家と難民孤児のロード・ムービーという図式も実に明快(設定だけならハリウッド映画でもありそうだ)。迫った死期と過去への悔恨、しかしそれでもそれらを引き受けて新たな“一日”に踏み出していく主人公の決意には感動した。いつもの暗うつなギリシアの曇り空とは別に、抜けるような青い空と地中海が登場する回想シーンが素晴らしいコントラストを生む(それぞれ違うカメラマンが担当している)。エレニ・カラインドロウによる音楽も美しい。

 主演のブルーノ・ガンツは、彼のフィルモグラフィの中でも最上の仕事ぶりを見せる。イザベル・ルノーやアキレアス・スケヴィス、イザベル・ルノーといった他のキャストも万全。第51回カンヌ国際映画祭におけるパルム・ドール獲得作だが、それも頷けるほどのヴォルテージの高さだ。

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