99年東宝作品。面白い。馬場康夫の演出は前作「波の数だけ抱きしめて」(91年)に比べて格段の進歩を見せ、ドラマが終盤に近づくにつれてグイグイ盛り上げていく。キャストも皆好調で。往年の東宝純正映画の明朗活発さがよみがえったという感じだ。“自転車便”という題材も良い。
イタリアの高級ファッションブランド“エンリコ・ダンドロ”のプレスを担当をしている尚実は、不景気など関係ない派手な生活を送っていた。ところが“エンリコ・ダンドロ”が突然倒産。路頭に迷うことになった彼女は、さらに車を運転中に自転車便のスタッフを撥ねてしまう。賠償金など払えない尚実は、ケガをして離脱したその社員の代わりに自転車便の会社で働くことになる。
慣れない肉体労働にヘトヘトになる尚実だが、顧客に感謝されたことを切っ掛けに、仕事に対して前向きになっていく。一方、大手商社の契約を取ろうとした自転車便会社は、居合わせたバイク便の細川とどちらが早く配達できるかを競うことになる。そして、見事勝利した彼らは商社の仕事を一括して受注することになったが、バイク便の会社はリターンマッチを申し込んでくる。
ヒロインの尚実は、バブルの幻影を引きずって軽佻浮薄な日々を送っているものの、その脆弱な生活基盤が崩れてしまうと、途端に厳しい現実に直面する。新たに得た“地道に汗水垂らして働く仕事”によって、やっとアイデンティティが確立される。言うまでもなく、馬場が率いるホイチョイ・プロダクションズの仕事の根幹には、80年代末のバブル時代との距離感が大きな割合を占めている。
バブル期に作られたそれまでの3作品は、いかにも時代に阿ったスタンスが鼻について好きになれなかったが、90年代末に撮られた本作においては、彼らなりの“バブルに対する決着の付け方(バブルは、しょせんバブルでしかない)”が見て取れる。その基本姿勢が形成されるのに、前作から8年もかかったと思えば何となく納得出来る。そして次作「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」(2007年)では、それが一層顕著になる。
多くの登場人物が自転車に乗ったままであるせいか、ドラマはスピーディーで飽きさせない。悪辣な方法によって主人公達を妨害するバイク便会社に立ち向かい、あの手この手でライバルを出し抜いていくプロセスは、実に痛快だ。
主演の飯島直子は絶好調。相手役の草なぎ剛もスポーティな感じでとても良い。京野ことみや矢部浩之、別所哲也、田中要次などの脇の面子も達者だ。そして加山雄三が“若大将そのまんま”で出てくるのには笑った。本間勇輔による音楽と久保田利伸の主題歌もも効果的で、これはこの時期の日本映画を代表する痛快編だと言える。
イタリアの高級ファッションブランド“エンリコ・ダンドロ”のプレスを担当をしている尚実は、不景気など関係ない派手な生活を送っていた。ところが“エンリコ・ダンドロ”が突然倒産。路頭に迷うことになった彼女は、さらに車を運転中に自転車便のスタッフを撥ねてしまう。賠償金など払えない尚実は、ケガをして離脱したその社員の代わりに自転車便の会社で働くことになる。
慣れない肉体労働にヘトヘトになる尚実だが、顧客に感謝されたことを切っ掛けに、仕事に対して前向きになっていく。一方、大手商社の契約を取ろうとした自転車便会社は、居合わせたバイク便の細川とどちらが早く配達できるかを競うことになる。そして、見事勝利した彼らは商社の仕事を一括して受注することになったが、バイク便の会社はリターンマッチを申し込んでくる。
ヒロインの尚実は、バブルの幻影を引きずって軽佻浮薄な日々を送っているものの、その脆弱な生活基盤が崩れてしまうと、途端に厳しい現実に直面する。新たに得た“地道に汗水垂らして働く仕事”によって、やっとアイデンティティが確立される。言うまでもなく、馬場が率いるホイチョイ・プロダクションズの仕事の根幹には、80年代末のバブル時代との距離感が大きな割合を占めている。
バブル期に作られたそれまでの3作品は、いかにも時代に阿ったスタンスが鼻について好きになれなかったが、90年代末に撮られた本作においては、彼らなりの“バブルに対する決着の付け方(バブルは、しょせんバブルでしかない)”が見て取れる。その基本姿勢が形成されるのに、前作から8年もかかったと思えば何となく納得出来る。そして次作「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」(2007年)では、それが一層顕著になる。
多くの登場人物が自転車に乗ったままであるせいか、ドラマはスピーディーで飽きさせない。悪辣な方法によって主人公達を妨害するバイク便会社に立ち向かい、あの手この手でライバルを出し抜いていくプロセスは、実に痛快だ。
主演の飯島直子は絶好調。相手役の草なぎ剛もスポーティな感じでとても良い。京野ことみや矢部浩之、別所哲也、田中要次などの脇の面子も達者だ。そして加山雄三が“若大将そのまんま”で出てくるのには笑った。本間勇輔による音楽と久保田利伸の主題歌もも効果的で、これはこの時期の日本映画を代表する痛快編だと言える。