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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「PNDC エル・パトレイロ」

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 (原題:EL PATRULLERO )91年メキシコ=アメリカ合作。アレックス・コックス監督の映画はあまり観ていないし、彼自身、ここ10年間は新作を手掛けていない。ただ、本作によって個人的にコックスは十分記憶に残る演出家になった。とにかく、この禍々しい吸引力には一目を置かざるを得ないだろう。

 ペドロ・ロハスとアニバル・グエレロはメキシコ国立ハイウェイ・パトロール・アカデミーを卒業後、交通機動隊に配属される。勤務地は沙漠の真ん中だ。ある日、ペドロは不法労働者を乗せたトラックを運転する若い女グリセルダを検挙するが、彼女に一目惚れした彼は、ほどなく結婚してしまう。だが、賄賂を受け取ることを拒んでいるため収入が少ないペドロに、グリセルダの不満は募ってゆく。

 仕事上でも冷や飯を食わされるようになった彼は、無許可のトラック運転手から思わず賄賂を受け取ってしまい、それからは堰を切ったように悪の道に入る。そんな時、麻薬密輸業者を追跡していたアニバルが、ペドロに助けを求めてくる。

 ストーリー自体はありがちだが、各キャストの気合いの入った働きぶり、そして絶妙な映像表現によって、最後までスクリーンから目が離せない。特筆すべきは、光と影のコントラストだ。

 照りつける灼熱の太陽、巻き起こる砂塵、パトカーに反射する眩しい陽光。それに対して主人公はサングラスを片時も離さず、また売春宿の底知れぬ闇が、昼間の日光と強烈な対比を成す。もちろんこれは、ペドロの内面の光と影をも表現している。クローズアップを極力廃し、ロングショットと長回しにより、明暗をくっきりと観る者に印象付けることに成功。1時間43分の映画だが、良い意味で長い時間をカバーしている。

 活劇場面は派手さは無いものの、乾いた即物性によりインパクトは大きい。主演のロベルト・ソサは、左頬に本物の傷痕があり、これがけっこう実録風の雰囲気を醸し出している。演技も達者だ。ブルーノ・ビシールやヴァネッサ・ボウシェ、ザイーデ・シルヴィア・グチエレスといった出演陣は馴染みが無いが、皆良い面構えをしている。

 ピカレスクな魅力が溢れるこの映画を製作したのは、今はなき日本の配給会社ケイブルホーグの主宰者であった根岸邦明だ。当時はバブルの余韻も残っており、こういう積極的な姿勢を持った映画人も多かったのだろう(今では信じられないが ^^;)。

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