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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「シンガポールスリング」

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 93年作品。若松孝二という監督は作品数が多く、その中には傑作も何本かあるのだが、一方では箸にも棒にもかからないシャシンもある。つまりは出来不出来が激しい作家で、本作はどうかというと、正直言って下から数えた方が早いだろう。気になるのがこれは若松自身や映画会社の企画ではなく、歌手の徳永英明の原案によるということだ。門外漢が関わると良い結果に繋がらないという、典型例ではないだろうか。

 加藤雅也と秋吉満ちるが扮する若夫婦が、オーストラリアで事件に巻き込まれてヒドイ目に会うという話。だいたいがこの二人、不幸に見舞われようが、くたばろうが、全然どうでもいいようなキャラクターである。



 英語が全然しゃべれないくせに外国をウロウロする加藤。英語はしゃべれて母親が外国人らしいのに地元の文化・習慣にまったく無頓着な秋吉。カメラ片手に所かまわずパチパチ写していると、うっかり暗黒街の顔役をとらえてしまい(そもそも、暗黒街のボスが観光客の面前にホイホイ出てくるという設定も疑問だが)、それで窮地に陥っていく・・・・などという設定は、まさに自業自得。同情の余地はない。

 ワナにはめられ、刑務所送りになった加藤を救うべく、地元のアボリジニの解放運動に参加している奇特な日本人(原田芳雄)のグループが刑務所を襲撃。あとは警察をも抱き込んだマフィア一味と主人公たちとのドンパチが展開するが・・・・いったいこの緊張感のカケラもない活劇シーンは何? ただ撃ちまくればアクションになるとでも思っているのだろうか。全体的に演出のキレは悪く、ラストの大ボケまで、気合いの入らない“活劇ごっこ”が延々垂れ流されていく。

 どう見たって評価以前の出来だが、公開当時は褒めている評論家がいるのには呆れたものだ。“素晴らしい出来映え”とか“若松孝二監督は自らの到達水準を更新した”とか、どこをどうすればそんな論評が出てくるのか、理解不能だ。ひょっとして原住民の解放闘争に参画する原田のキャラクターに、全共闘世代へのオマージュとやらを感じていたりして・・・・。言うまでもなく、そんなの私には関係ない。

 なお、音楽も徳永が担当しているが、サウンドがほとんど画面に合っておらず、大いに盛り下がる。

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