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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「極東黒社会」

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 93年東映作品。シシリアン・マフィアと手を組んだ香港の組織と、対立する台湾ヤクザ、それらに荷担する日本の暴力団などが暗躍する新宿を舞台に、ニューヨークからやってきた捜査官(ショー・コスギ)と外人部隊上がりのフリーの売人(役所広司)を中心に、日本の麻薬汚染の実態を描こうとしている。

 で、観た印象はというと、イマイチの出来。確かに設定は面白い。各国のマフィア、麻薬Gメン、悪徳刑事etc. これを実録風に、すさまじい暴力描写とキレのいいアクション、ハデな見せ場と猥雑な新宿の街の風景をシンクロさせて、スピード感あふれる演出でブッちぎってしまえば、こりゃかなりの傑作になったところだが・・・・。



 確かに日本映画には珍しく、活劇シーンにはカネをかけているし(ヘリコプターの爆破シーンまである)、キャストも国際的なのだが、演出のリズムというか、緊張感がまるで足りない(各シークエンスの切り替えの手際の悪さも目立つ)。爆発シーンの連続だけではアクション映画にはならないのだ。

 主要登場人物以外のキャラクターの紹介にしても通りいっぺんの描写しかなく、凡庸なキャラクターがガン首並べて走り回っている印象だ(外人キャラの扱い方も、ハッキリ言ってヘン。まあ、これは仕方ないかもしれないが)。コスギ演じる日系三世の麻薬捜査官が見せる日本への思い入れは、ひょっとして作者が一番描きたかった素材かもしれないが、平板なアクションの羅列の中では、とって付けたような印象しか持てない。

 実録路線を狙っているわりには、役所広司の部下(近藤真彦)とその恋人(北原佐和子)とのエピソードの扱い方はかなりウェットで、描写自体は悪くないものの、そこだけドラマから浮いてしまった印象を受ける。

 監督は新人の馬場昭格だが、デビュー作とはいっても助監督としてかなりのキャリアを積んでいる人材だけに、もっと根性を見せてほしかったが、結果として平凡な仕事に終わっている。キャストにいつもの東映の顔ぶれが見られないのも気になるところ。なお、一応“R指定”だが、この程度ではテレビの刑事ものと変わらず、どこが“R指定”なのかさっぱりわからない。

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