(原題:WHITE HEAT)1949年作品。題名通り、まさに画面から熱気が伝わってくるような高密度のギャング映画だ。この時代に斯様なハイ・ヴォルテージの作品が世に出ていたということは、当時のハリウッドにはよほど優秀な人材が溢れていたのだろう。
札付きの凶暴なワルであるコディ・ジャレツは、一味と共に列車強盗をはたらき大金をせしめた。捜査当局はこの事件をコディ達の犯行と断定し追跡を開始するが、逃げ切れないと観念したコディは同じ日に別の場所で起こった強盗事件の犯人として自首し、無理矢理にアリバイをデッチ上げる。収監されたコディだが、何とかシッポを掴みたい警察は捜査員のハンクを同じ監房に潜入させる。
一方、コディの妻のヴェルナは夫が服役している間に一味のエドと懇ろになっていた。エドは組織を我が物にすべく暗躍。一味を束ねていたコディの母親を殺害する。その事実を知ったコディはエドに復讐するため仲間の協力を得て脱獄するが、ハンクも同行するハメになる。ヴァージニア・ケロッグによる原案を、アイヴァン・ゴフとベン・ロバーツが脚色したものだ。
とにかく、主人公コディの造型が凄い。血も涙も無い凶悪犯ながら、強度のマザコンだ。彼がギャングとしてのし上がったのは、母親の常軌を逸した“教育”によることが示される。そんな彼が母親が死んだことを知り、錯乱状態になって無謀な逃避行に突き進んでいく有様は、まさに“白熱”したようなパッションが画面を横溢する。
コディに扮したジェームズ・キャグニーのパフォーマンスは圧倒的で、彼が稀代の演技者であることを証明している。ラウール・ウォルシュの演出は弛緩した部分が微塵も認められず、息苦しくなるような迫力を映画の進行と共に幾何級数的に盛り上げていく手腕には感服するしかない。母親役マーガレット・ウィチャリーの怪演、ヴェルナに扮したヴァージニア・メイヨとハンクを演じるエドモンド・オブライエンの仕事ぶりも確かなものだ。
クライマックスは、ロング・ビーチの大化学工場を襲おうとするコディ一味と、警官隊との大々的なバトルだ。ハンクの働きにより、コディはいよいよ追い詰められる。そして破滅的なラストは、後年のアメリカン・ニュー・シネマを先取りしたような強いインパクトを残す。シド・ヒコックスのカメラによる、ギラギラとしたモノクロ画面。マックス・スタイナーの音楽も言うことなしだ。