(原題:THE FUGITIVE)93年作品。ご存知往年のテレビ・シリーズの映画化で、ずいぶん前から企画はあったらしいが、結局5年間に15回もの改稿を余儀なくされ、ようやく完成にこぎつけた作品。そうまでして映画化しなきゃいけない題材かとは思うけど、「スター・トレック」や「アンタッチャブル」の例をあげるまでもなく、こういうカリスマ的人気を誇った番組にはアメリカ人は特別の思い入れがあるとみえる。日本でもテレビ番組の映画化は珍しくないが、放映時に限っての話であり、昔の番組をわざわざ映画にすることはあまりない。
シカゴの著名な外科医リチャード・キンブル博士がある晩帰宅してみると、家から怪しい片腕の男が飛び出してくる。しかも、家の中では妻ヘレンが殺されていた。キンブルは妻殺しの容疑で逮捕される。犯人は片腕の男であると主張する彼だが、状況証拠は不利なものばかり。ついには死刑判決が下る。ところが刑務所へ移送される途中に護送車が事故に遭い、キンブルは脱走。身の潔白を証明するために、キンブルは片腕の男を探し求める。一方、捜査責任者となったジェラード連邦保安官補は、キンブルを猛追する。
さて、監督が「沈黙の戦艦」(92年)のアンドリュー・デイヴィスだからほとんど期待していなかったが、推敲を重ねた脚本のせいか、退屈しないで観られた。キンブル医師(ハリソン・フォード)を追い回すトミー・リー・ジョーンズの刑事が最高の演技で、作品に重みを加えているし、冒頭の列車事故のシーンやキンブルが巨大ダムに飛び込む場面など見せ場も満載だ。
しかし、満点の出来ではない。テレビ放映時の60年代ならともかく、公開時点においても逃亡者が自分で傷を直し、金もないのにホテルに泊まり、堂々と大都会を歩き回っているのに誰にも知られないなんて不可能である。
そして、テレビ・シリーズのような人の情けで逃げる場面がまったくないのも不満だ。それはそれで凄いことなのかもしれないが、そこまで主人公を追いつめるなら、彼をスーパーヒーローにしなければならず、そのへんの設定に無理が出てくる(いくらインディ・ジョーンズを演じたフォードでもねぇ)。あまりにも上手くいきすぎて、真相がわかったあともカタルシスは十分得られない。私としては“片腕の男”にもっと活躍してほしかったが、あっけなく出番が終わってしまうのも芸が無い。
それにしても、同じプロダクションで製作されていた「インベーダー」の映画化の話はどうなったのだろうか。あっちの方を観たい気がする。
シカゴの著名な外科医リチャード・キンブル博士がある晩帰宅してみると、家から怪しい片腕の男が飛び出してくる。しかも、家の中では妻ヘレンが殺されていた。キンブルは妻殺しの容疑で逮捕される。犯人は片腕の男であると主張する彼だが、状況証拠は不利なものばかり。ついには死刑判決が下る。ところが刑務所へ移送される途中に護送車が事故に遭い、キンブルは脱走。身の潔白を証明するために、キンブルは片腕の男を探し求める。一方、捜査責任者となったジェラード連邦保安官補は、キンブルを猛追する。
さて、監督が「沈黙の戦艦」(92年)のアンドリュー・デイヴィスだからほとんど期待していなかったが、推敲を重ねた脚本のせいか、退屈しないで観られた。キンブル医師(ハリソン・フォード)を追い回すトミー・リー・ジョーンズの刑事が最高の演技で、作品に重みを加えているし、冒頭の列車事故のシーンやキンブルが巨大ダムに飛び込む場面など見せ場も満載だ。
しかし、満点の出来ではない。テレビ放映時の60年代ならともかく、公開時点においても逃亡者が自分で傷を直し、金もないのにホテルに泊まり、堂々と大都会を歩き回っているのに誰にも知られないなんて不可能である。
そして、テレビ・シリーズのような人の情けで逃げる場面がまったくないのも不満だ。それはそれで凄いことなのかもしれないが、そこまで主人公を追いつめるなら、彼をスーパーヒーローにしなければならず、そのへんの設定に無理が出てくる(いくらインディ・ジョーンズを演じたフォードでもねぇ)。あまりにも上手くいきすぎて、真相がわかったあともカタルシスは十分得られない。私としては“片腕の男”にもっと活躍してほしかったが、あっけなく出番が終わってしまうのも芸が無い。
それにしても、同じプロダクションで製作されていた「インベーダー」の映画化の話はどうなったのだろうか。あっちの方を観たい気がする。