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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「リメンバー・ミー」

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 (原題:COCO)良いところもあるのだが、釈然としない部分が大きく、全体としては“中の下”の出来だ。少なくとも、アカデミー賞を獲得するほどの作品とは思えない。もっとも、彼の国では劇場用長編アニメーションの本数自体が多くないと思われるので、主要アワードは大手製作プロダクションの“持ち回り”なのかもしれない。

 主人公は、メキシコの田舎町サンタ・セシリアに住む12歳の少年ミゲル。彼の家では、音楽は禁止されていた。ミゲルの高祖父にあたる人物が、ミュージシャンに専念するため妻子を捨てたという過去があるからだ。しかしミゲルは音楽が大好き。往年の大歌手エルネスト・デラクルスに憧れ、将来は音楽家として世に出ようと思っていた。

 年に一度先祖が会いに来るという“死者の日”に、ミゲルは音楽コンテストに出ようとするが、自前のギターは祖母に壊されてしまった。そこでデラクルスの遺品のギターを拝借しようとするが、その瞬間、彼は死者の国に迷い込んでしまう。日の出までに先祖に許しを請い、承諾を得なければ元の世界に戻れなくなる。ひょっとするとデラクルスが自分の先祖ではないかと思い当たったミゲルは、彼を探すため冒険の旅に出る。

 きらびやかな死者の国の描写や、ミゲルの生い立ちが明かされる部分、そして音楽を通じて主人公が家族と和解するあたりの段取りは上手い。そして音楽そのものの使い方も万全だ(字幕版で観て良かったと思う)。しかしながら、出てくる連中の大半がガイコツだというのは、正直言って気色が悪い。まあ、メキシコの“死者の日”のシンボルがガイコツなので仕方が無いのかもしれないが、私としては生理的に受け容れがたい。

 そして最大の難点は、死者を思い出してくれる生者がいなくなってしまうと、死者の国から消滅してしまうという設定だ。これはかなりキツい。いくら惜しまれて亡くなっても、よほどの有名人でもない限り、当人を覚えている者がずっと存在しているわけではない。いつかは消滅する運命だ。つまり、この作品世界では亡者は2度の“死”を体験しなければならず、しかも2回目の“死”は“無”に帰すのだ。それはあまりにも理不尽ではないか。

 ならば身寄りの無い者や誰にも看取られないまま世を去った者は、死者の国にも行けず、魂は直ちに抹消されてしまうということか。そんな救いの無いシチュエーションを差し置いて、家族愛ばかりを謳い上げるのは、実に空々しいと思う。

 リー・アンクリッチとエイドリアン・モリーナの演出はテンポが良く、各キャラクターも“立って”いるのだが、作品の設定が斯くの如しなので評価するわけにはいかない。

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