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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「トイズ」

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 (原題:TOYS)92年作品。封切り時の世間の評判は芳しくなかったようだが、実際観たらなかなかこれが面白い。真の意味で大人も子供も楽しめる良心作だと思う。子供たちに夢を与えることを生きがいとした前社長(「雨に唄えば」のドナルド・オコナー!)が亡くなって、おもちゃ工場は軍国主義者の弟リーランド(マイケル・ガンボン)に乗っ取られる。おもちゃサイズで本物の殺傷能力のある兵器を大量生産しようという陰謀を知った前社長の息子(ロビン・ウィリアムズ)は、反撃に立ち上がる。

 まずは画面の造形に圧倒される。ダンボみたいな工場の外見や大きく蛇行する通路、おもちゃのカルガモ親子が道を横切るのを待つ社員、ミュージカル仕立ての工場の作業風景、大空を描いた壁紙が張ってある大きな部屋の中にポツンとある寝室、巨大な箱から自動的に組み立てられて出てくる主人公の屋敷、果てはルネ・マグリットの絵を引用したミュージック・ビデオのパロディまである(これは実に楽しかった)。そう、これは飛び出す絵本の映像化なのだ。



 ミニチュアと現実のシーンを巧みに合成し、ファンタスティックな世界を作り上げたのは、「ラストエンペラー」でオスカー受賞のフェルディナンド・スカルフィオッティ。明るくポップなおもちゃ工場の場面と、暗く不気味な軍人の部屋との対比も見事だ。そして工場の回りは見渡す限りの草原。どこか地球以外の天体を思い起こさせる。

 キャラクターも徹底的にユニーク。ロビン・ウィリアムズ扮する主人公レスリーはおもちゃ作りにしか興味のない、まさしく“おもちゃ”みたいな人物だ。煙を吐き出し、奇妙な音の出るジャケット(これは私も欲しい)に身をつつみ、ギャグを飛ばしまくる。

 ジョーン・キューザック演じるレスリーの妹は、それに輪をかけたマンガみたいな怪人物。自らが着せ替え人形のモデルを担当するというのは笑った。リーランドの息子を演じるのはなんとLL・クールJ。特殊工作員で、カメレオンのごとく神出鬼没。レスリーの恋人になるロビン・ライトも本作では可愛い。アカデミー賞候補になったアルバート・ウォルスキーによる衣装が素晴らしい。

 何ら武器を持たないおもちゃたちが、ハイテク兵器おもちゃに踏みにじられていくクライマックスは、けっこうシビアーだ。背景に流れる反戦平和のメッセージが無理なく的確に観客に伝わっていると思う。それにしてもよくこれだけユニークなおもちゃを集めたものだ(当時のキネマ旬報の記事によると、ほとんどが日本製らしい)。人によってはバカバカしいと毛嫌いしそうな題材だが、その題材を多額の製作費と贅沢なスタッフでこれだけの作品に仕上げたバリー・レヴィンソン監督の力量に感心した。

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