私は正直言って、EDMという音楽ジャンルは好きではない。いかにも“お手軽”に作られた音という感じで(本当は手間が掛かっていることは承知しているものの)、ライトに過ぎる。つまり、聴き応えがないのだ。しかし、ニューヨークに拠点を置くザ・チェインスモーカーズのデビューアルバム「メモリーズ...ドゥー・ノット・オープン」(2017年発売)を何気なくCDショップで試聴したところ、とても良い印象を受け、思わずディスクを買ってしまった。
ザ・チェインスモーカーズは、アンドリュー・タガートとアレックス・ポールの2人からなるEDMユニットで、結成は2012年。2016年にリリースした「クローサー」が大ヒットしてグラミー賞候補になっている。彼らの作る楽曲は決して無機的ではなく、実にメロディアスだ。また、70年代に流行った“ソフト・アンド・メロウ”のテイストをも感じさせ、幅広い層にアピール出来る。少なくとも、他のEDMミュージシャンの楽曲のように、ダンス系に振られた(私のようなオッサンにとっては)聴き疲れするような展開にはなっていない。
収録されたナンバーの半数以上が他のシンガーとのデュエット・ソングになっており、しかもすべて相手が違う。だからアルバム全体がヴァリエーションに富み、単調にならない。特にコールドプレイとのコラボ作「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」は気に入った。日本盤には「クローサー」を含む3つのヒット曲がボーナストラックとして入っており、お買い得感は高いと言えよう。
イタリア生まれのジャズ・ピアニスト、ロベルト・オルサーのディスクは以前ピアノトリオ作の「ステッピン・アウト」を紹介したが、このトリオにトランペットとフリューゲルホーンを担当するファルビオ・シガルタが加わったカルテットによるアルバム「フローティン・イン」も、かなり中身の濃い作品だ(2016年録音)。
大半がオルサーとベーシストのユーリ・ゴロウベフによるオリジナル曲だが、いずれもメランコリックで美しい旋律を有している。テンポの違いはあるが、どれも哀愁に満ちた仄暗い情熱を感じさせて、聴いていて気持ちが良い。各プレーヤーのパフォーマンスも流麗で淀みがなく、デリケートかつアグレッシヴに仕上がっている。唯一の既成曲であるリッチー・バイラーク作の「エルム」も、しみじみと聴かせる。
録音は「ステッピン・アウト」ほどではないが、高水準だ。人工的な音場ながら、各楽器の輪郭はしっかりと捉えられていて、オーディオ的快感は十分に得られる。なお、オルサーによるユニットは澤野工房からリリースされているものもあるが、こちらは大したことは無い(特に曲調が凡庸)。やはりレーベルとミュージシャンとの相性というものがあるのだろう。
スメタナの弦楽四重奏曲第一番「わが生涯より」は有名なナンバーではあるのだが、今までディスクを購入したことが無かった。何度か買おうと思ったことはあった。しかしタイミングが悪かったのか、いずれもショップに適当なものが置いておらず、そのたびに諦めていたのだが、今回スメタナ四重奏団による代表的なヴァージョンが廉価盤として再発され、ようやく手にすることが出来た。
この曲は作曲者自身の、文字通り“わが生涯”を綴ったような重量感のある内容で、技巧的にも難しいとされている。だがスメタナ四重奏団は軽々と弾きこなしており、かつ鮮烈で情感豊かだ。メロディラインは伸び伸びと歌われており、さすがこのナンバーの決定版と言われるだけのことはある。カップリングされている第二番も優れた演奏だ。
吹き込まれたのは76年だが、デジタル録音の嚆矢とも言える内容で、音質は良い。なお、今回購入したのはUHQCD(アルティメット・ハイ・クォリティCD)仕様によるものだ。実は、数年前に同内容でBlu-spec CD仕様のディスクも発売されたらしい。そっちの方は聴いたことが無いのだが、明らかに音が違うらしく、UHQCD版が上質だという評もある。やはりディスクの仕様が異なると音も変わってくるというのは、当然考えられることなのだろう。
ザ・チェインスモーカーズは、アンドリュー・タガートとアレックス・ポールの2人からなるEDMユニットで、結成は2012年。2016年にリリースした「クローサー」が大ヒットしてグラミー賞候補になっている。彼らの作る楽曲は決して無機的ではなく、実にメロディアスだ。また、70年代に流行った“ソフト・アンド・メロウ”のテイストをも感じさせ、幅広い層にアピール出来る。少なくとも、他のEDMミュージシャンの楽曲のように、ダンス系に振られた(私のようなオッサンにとっては)聴き疲れするような展開にはなっていない。
収録されたナンバーの半数以上が他のシンガーとのデュエット・ソングになっており、しかもすべて相手が違う。だからアルバム全体がヴァリエーションに富み、単調にならない。特にコールドプレイとのコラボ作「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」は気に入った。日本盤には「クローサー」を含む3つのヒット曲がボーナストラックとして入っており、お買い得感は高いと言えよう。
イタリア生まれのジャズ・ピアニスト、ロベルト・オルサーのディスクは以前ピアノトリオ作の「ステッピン・アウト」を紹介したが、このトリオにトランペットとフリューゲルホーンを担当するファルビオ・シガルタが加わったカルテットによるアルバム「フローティン・イン」も、かなり中身の濃い作品だ(2016年録音)。
大半がオルサーとベーシストのユーリ・ゴロウベフによるオリジナル曲だが、いずれもメランコリックで美しい旋律を有している。テンポの違いはあるが、どれも哀愁に満ちた仄暗い情熱を感じさせて、聴いていて気持ちが良い。各プレーヤーのパフォーマンスも流麗で淀みがなく、デリケートかつアグレッシヴに仕上がっている。唯一の既成曲であるリッチー・バイラーク作の「エルム」も、しみじみと聴かせる。
録音は「ステッピン・アウト」ほどではないが、高水準だ。人工的な音場ながら、各楽器の輪郭はしっかりと捉えられていて、オーディオ的快感は十分に得られる。なお、オルサーによるユニットは澤野工房からリリースされているものもあるが、こちらは大したことは無い(特に曲調が凡庸)。やはりレーベルとミュージシャンとの相性というものがあるのだろう。
スメタナの弦楽四重奏曲第一番「わが生涯より」は有名なナンバーではあるのだが、今までディスクを購入したことが無かった。何度か買おうと思ったことはあった。しかしタイミングが悪かったのか、いずれもショップに適当なものが置いておらず、そのたびに諦めていたのだが、今回スメタナ四重奏団による代表的なヴァージョンが廉価盤として再発され、ようやく手にすることが出来た。
この曲は作曲者自身の、文字通り“わが生涯”を綴ったような重量感のある内容で、技巧的にも難しいとされている。だがスメタナ四重奏団は軽々と弾きこなしており、かつ鮮烈で情感豊かだ。メロディラインは伸び伸びと歌われており、さすがこのナンバーの決定版と言われるだけのことはある。カップリングされている第二番も優れた演奏だ。
吹き込まれたのは76年だが、デジタル録音の嚆矢とも言える内容で、音質は良い。なお、今回購入したのはUHQCD(アルティメット・ハイ・クォリティCD)仕様によるものだ。実は、数年前に同内容でBlu-spec CD仕様のディスクも発売されたらしい。そっちの方は聴いたことが無いのだが、明らかに音が違うらしく、UHQCD版が上質だという評もある。やはりディスクの仕様が異なると音も変わってくるというのは、当然考えられることなのだろう。