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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「第10回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その1)

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 去る4月27日から29日にかけて、福岡市博多区石城にある福岡国際会議場で開催された「九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきたのでリポートしたい。今年(2013年)で第10回目となるが、それを記念した大々的な企画は無かった(爆)。それどころか(あえて開催時期を大型連休に持ってきたせいか)出品されたモデルの総数も例年に比べて少ないように感じた。まあ、その分参加者としては個々の製品にジックリと向き合えるかもしれないので、一概にそれが悪いとも言えないだろう。

 ただし“大々的なイベント”こそ織り込まれなかったものの“いつも通りの規模のイベント”は開催された(笑)。それは評論家の小原由夫を招いてのハイレゾ音源聴き比べ大会である。以前のアーティクルでも述べたが、このこのハイレゾ(ハイレゾリューション)音源とはインターネットからダウンロード出来る音楽ソースの中で、通常CDを上回る定格を持つものを指す。



 各社のDACやネットワークプレーヤーを介して、ハイレゾ音源の鳴り方の違いをチェックしようという段取りだったが、個人的にはハイレゾ音源そのものが音楽メディアとしては“不完全”なものだと思っているので、あまり興味の持てる催しではなかった。よって、構成機器の紹介および各DACやネットワークプレーヤーごとのインプレッションは省かせてもらう。ただし、アンプ類と同様にいずれのDAC等のパフォーマンスも“値段相応”だったことは述べておきたい。

 それよりも強く印象に残ったのが、同時にデモされていたアナログプレーヤー、TechDASのAir Force ONEである。TechDAS(テクダス)とは、オーディオ製品の輸入を手がけている株式会社ステラが自ら企画・開発を行なったオリジナルブランドだ。昔、MICRO(マイクロ)というハイエンド型プレーヤーの専門メーカーがあったが、そこに在籍していた腕利きのエンジニアがプロデュースしているという。

 価格は680万円ほどで、アタッチメントも備えると800万円にも達する。惜しみなく物量が投入され、講師の小原も“究極のプレーヤーだ”と褒め上げるような横綱級の定格を誇る。音も素晴らしく、解像度(特に高域)に関してはハイレゾ音源に少し分があるのかもしれないが、音の密度や安定感、そして地に足が付いたようなリアリティはデジタル音源では出せないと思われるようなハイレベルの展開を見せる。



 もちろん、Air Force ONEは今回紹介されたDACやネットワークプレーヤーよりも高価なので“値段相応”だと言うことも出来る。しかし、仮に800万円かけたデジタル機器が登場しようとも、アナログらしい魅力を兼ね備えたサウンドが奏でられるとは思えない。アナログ音源の音楽再生に対するアプローチは、デジタル再生とは別の次元で成立しているとも言える。

 そういえば、近年アナログレコードの“復権”が注目されているらしい。それも、今までレコードなんか聴いたこともなかった若年層がハマっている例が多いと聞く。講師の小原は“PCオーディオでは、カートリッジを替えるように音楽の再生・管理ソフトをあれこれ使い分け、音の変化を楽しめる”と言うが、いくらソフトで音が変わったところで、しょせんそれはPCの中のブラックボックス的存在の様相がチェンジしただけだ。アナログプレーヤーにおいて針が音溝をトレースするところを“直接見られる”ような興趣は求めようがない。

 ハイレゾ音源やSACDも結構だが、趣味性の高さにおいてはアナログの敵ではない。それに何より、今も市場に多数出回っている通常CDの音を十分追い込まないで、安易に高スペックのメディアに飛びついてしまう業界の姿勢にも愉快ならざるものを感じる。・・・・まあ、こんなことを書くと“アナクロ派だな”と笑われてしまいそうだが(笑)。

(この項つづく)

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