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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「2/デュオ」

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 97年製作。東京芸術大学の教授でもある諏訪敦彦監督の長編デビュー作で、シノプシスだけでセリフや所作はキャストの即興に任せるという、同監督の独自の手法が採用された最初の作品だと思われる。ただし、本作ではそれが上手く機能しているとは思えない。

 優はブティックの女子店員で、恋人で売れない俳優の圭を支えながら一緒に暮らしている。ある日、優は圭から結婚を申し込まれる。めでたい話のはずだが、彼女は圭の真意をイマイチ信用していない。圭に問い質しても、彼は結婚生活に対する手前勝手な願望を語るばかり。やがて2人の間に溝ができ、圭は感情に任せてDVに走るようになる。そして、ついに優は圭の元から姿を消す。数年後、俳優の夢をあきらめて就職した圭は、街で偶然に優と再会する。彼は関係の修復を持ちかけるが、優は首を縦に振らない。圭は全てに踏ん切りを付け、優と暮らしたアパートを引き払うことを決める。



 要するに、この2人は未熟な子供なのだ。子供同士が勝手に乳々繰り合って、勝手にキレて、勝手にヨリ戻そうとしたと、それだけの話。確かに内面をジリジリ描き出すこの監督独特のドキュメンタリーもどきのタッチは効果を上げているが、悩んでいる内容の程度が極端に低いものだから、時として脱力してしまう。

 それから、作者が登場人物にインタビューする場面には面食らった。明らかにこれは一回限りの“禁じ手”である。もしもまたやったら赤っ恥だ。

 しかし諏訪監督、次作の「M/OTHER」(99年)では題材をガキの遊びから家族・親子といった厳然たる社会構成単位に移し、いわば逃げ場のないスタンスに自らを追い込んでいるあたり、作家としての成長が感じられる。作風はどうあれ、進歩しているのは良いことだ。

 優を演じる柳愛里は芥川賞作家の柳美里の妹で、けっこう達者な演技を披露している(今は一線を退いてしまったのは残念だ)。圭に扮しているのは後にブレイクする西島秀俊で、この頃から目立った存在感を醸し出していた。撮影監督の田村正毅はドキュメンタリー畑で鳴らしたベテランだが、ここでも即物的で臨場感のある映像の創出に貢献している。

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