欠点はかなり目立つのだが、決して嫌いではない(笑)。実録のスポ根ものという、鉄板の御膳立て。しかも漫画などの安易な映画化ではなく、オリジナル脚本で勝負。何より主要キャストの存在感と頑張りが強く印象に残る。
福井中央高校に入学した友永ひかりは、密かに想いを寄せていた中学時代からの同級生・孝介がサッカー部に入部したことを知り、試合で彼を応援するためにチアダンス部に入ることにする。ところがクラブの顧問教師である早乙女薫子は、軽い気持ちでいたひかり達の出鼻をくじくように“全米制覇!”という無謀な目標をブチあげ、想像を絶する激しい指導を行う。あまりのスパルタぶりに退部者が続出するが、ひかりは部長に任命された彩乃をはじめとするチームメイト達と心を通わせ、部活を続けることにする。2009年に全米チアダンス選手権大会で優勝した福井商業高校のチアリーダー部をモデルにしたドラマだ。
困ったことに、肝心のチアダンスの描写が不十分だ。練習の場面はまあ良いとして、試合のシーンはまるで要領を得ず、観ていてシラけてしまう。そもそも、主人公達が舞台でパフォーマンスを披露するのは不調に終わったデビュー戦と、クライマックスの全米大会の決勝戦のみ。2試合以外の振り付けが考案されていなかったのだろうが、見せ方を工夫して断片的でも良いから予選からの軌跡を印象付けて欲しかった。
しかも、その決勝戦もカメラは大騒ぎする地元の者達に振られることが多く、ダンスに集中していない。試合直前になって変更されたフォーメーションの概要も説明されない有様だ。
周囲の大人達の扱いはステレオタイプかつ不自然にマンガチック。特に早乙女先生に扮する天海祐希は、観ていて胸やけを起こすほどのオーバーアクトである。また、劇中で福井県の学校であることがやたら強調されるにも関わらず、ロケが新潟県で行われているのは納得できない。これでは“看板に偽りあり”だ。
しかしながら“落ちこぼれどもが奮起して活躍する”というスポ根のルーティンを提示されると、笑って許したくなるのも事実(笑)。各部員のキャラクターも“立って”いる。ひかり役の広瀬すずは余裕の演技。若いのにこの貫禄は一体何だと思ってしまった。
山崎紘菜や福原遥、太めで抜群のコメディリリーフを見せる富田望生、バレエが得意という設定ながら体型が(肉付きが良い)グラビアアイドルの柳ゆり菜など、いずれもイイ味を出している。最も興味を惹かれたのは彩乃に扮する中条あやみで、演技はまだ硬いがスラリとした品のある佇まいで画面に彩りを添える。なお、恥ずかしながらチアダンスとチアリーディングが別物であることを、この映画を観て初めて知った(苦笑)。