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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ラ・ラ・ランド」

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 (原題:LA LA LAND)明らかに、作者の興味の対象外である題材を無理矢理に採用したという印象だ。ひょっとしたら本人にはその自覚は無かったのかもしれないが、観る側からすればそれは一目瞭然。別のスタッフと別のキャストで製作した方が、はるかにマシな出来になったと思われる。

 ハリウッドの撮影スタジオの近くにあるカフェでバイトしているミアは女優志望。何度もオーディションを受けるが、色好い返事をもらったことはない。今日も不合格で落ち込んだ彼女がピアノの音色に誘われて入ったジャズバーで偶然ピアニストのセバスチャンと出会うが、印象は最悪だった。後日、ミアはパーティ会場で軟派な音を奏でるバンドの一員になっているセバスチャンを発見。ジャズバーをクビになって、やむなくそんな仕事をしていたのだ。初めて会話をしたものの衝突してしまう2人だったが、互いの境遇と夢を知るようになって惹かれ合う。ところがセバスチャンが“生活のために”一時的に加入したバンドが売れてしまい、ミアとの“格差”が表面化する。

 昨今のアメリカ映画では珍しいミュージカル作品だが、まるでサマになっていない。何より、主演2人の歌と踊りのスキルが低すぎる。しかも、オリジナル楽曲のクォリティが大したことない。ミュージカル映画なので深くて込み入ったストーリーは必要ないとは思うが、それにしては面白くない話である。片方が有名になったと思ったら、もう片方が時間をおいてブレイクするという筋書きを、何のひねりも無く漫然と展開させるのみだ。

 ならば演出と脚本を担当したデイミアン・チャゼルが一番撮りたかったものは何かというと、それはジャズだろう。要領を得ないミュージカル場面が目立つ本作の中で、ジャズのライヴだけは躍動感に満ちている。セバスチャンのジャズに対する思い入れ、決して恵まれているとは言えないジャズの現状と将来に関する提言、そしてスタンダードなジャズの素晴らしさを訴えたいという作者の意図は明白だ。

 しかし、一方でそれは“ジャズ以外の音楽”の扱いの安直さにも繋がっている。セバスチャンが所属したバンドがやっているのは、お手軽な80年代ポップスや平凡なファンク・サウンドだ。とてもジャズに比肩しうるものとは思えない。この監督、若いくせに最近の音楽に疎いのではないだろうか。

 主演のライアン・ゴズリングとエマ・ストーンは健闘しているが、ミュージカルに相応しい人材ではない。そして、彼ら以外のキャラクターが全くクローズアップされていないのにも閉口してしまう。ともあれ、現時点でミュージカル映画を作ろうとするならば、アップトゥデートな切り口が必要だろう。往年のMGMミュージカルと似たような次元で留まっていては、高い感銘度は期待できない。

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