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Channel: 元・副会長のCinema Days
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最近購入したCD(その34)。

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 最近よく聴いているのが、2005年にロンドンで結成されたポスト・ポップバンド、ザ・エックス・エックスのサード・アルバム「アイ・シー・ユー」である。前の2作も試聴したことがあるのだが、質の高さは認めるものの過度にメランコリックで高踏的な雰囲気で、ちょっと腰が引けたものだ。しかし本作は実にポップで聴きやすい。



 とはいえ、このグループ特有のストイックで耽美的なタッチは健在だ。フォークをベースとしてエレクトロニクス風味で仕上げるという方法論だが、重厚かつキレのいいビートと、美しいメロディが織りなす世界観は聴けば聴くほど魅了される。かと思えばダンス路線を狙ったり、ホール&オーツのナンバーをサンプリングしたアグレッシヴな楽曲などもあり、曲調はバラエティに富んでいる。

 メンバーのジェイミー・スミスはインタビューで“(ネット環境などで)音楽を聴くスタイルは変わったが、やっぱりアルバム作品として接して欲しい”という意味のコメントを残しており、“断片的な聴き方をされてたまるか!”といった気負いが感じられて好ましい。すでに英米では良好なチャート・アクションを示している。幅広く奨められるディスクだ。

 ロンドン在住のソングライターで音楽プロデューサーであるデヴ・ハインズのソロ・プロジェクト、ブラッド・オレンジの3枚目になるアルバム「フリータウン・サウンド」は、精緻な音作りで聴く者を引き込んでしまう秀作だ。前2作は聴いていないが、このディスクに接するだけでも並々ならぬ才能が感じられる。



 R&B及びソウルが基調だが、メロディ・ラインは考え抜かれており、各音像の重ね方は呆れるほど見事だ。鋭敏で力強いビートが奥行きのあるサウンド・デザインに映える。ヴォーカルはソウルフルかつアーシーで、ある時はクールに、またある時は端正でマイルドに綴られる。ダンス・テイストやアフリカ風味も上手く取り入れ、ナンバーごとに違ったアプローチが成されている。

 タイトルの“フリータウン”とは、彼の父親の出身地であるシエラレオネの首都である。自らのルーツを探るようなスケール感と味わい深さを持たせた音作りであろう。なお、録音はクォリティが高い。特に高域のヌケは病み付きになるほどだ。ブラック・ミュージックが好きなリスナーにとっては必聴の一作と言って良い。

 ベース奏者のフェルチオ・スピネッティと女性ヴォーカルのペトラ・マゴーニによるイタリアのペア・ユニット、ムジカ・ヌーダが2004年に発表したファースト・アルバム(タイトルはユニット名そのまま)は、オーディフェアなどではよくデモ音源として使われている。今回入手して聴いてみると、サウンド・マニア必携のディスクであると改めて思う。



 とにかくコントラバスの低域表現が凄い。ウーファーが盛大にブルブルと震えだして慌ててしまうほど(笑)。しかも歪感や混濁はほとんど感じず、クリアに録られているのには感心するしかない。余計なイコライジングが施されていないヴォーカルも実に生々しく、明確な音像表現を伴って聴き手を圧倒する。音場は広くはないが、クリーンで心地よい。

 もちろん、録音だけではなく内容も十分に高水準だ。ビートルズの「エリナー・リグビー」やポリスの「ロクサーヌ」といったよく知られたナンバーを、絶妙のアレンジで朗々と聴かせる展開はスリル満点。ジャズ好きだけではなく、音楽ファン全般を納得させてしまうほどのヴォルテージの高さが光る。彼らの他のアルバムも聴いてみたいものだ。

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