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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ドクター・ストレンジ」

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 (原題:DOCTOR STRANGE)豪華なキャスティングがまるで機能していない。大味な凡作だ。マーベル・コミック系列の映画は出来不出来が激しいが(というより、どちらかというと不出来の方が多い ^^;)、本作は俳優陣のクォリティの高さゆえ、内容のお粗末さが余計に強調されるという展開になっている。

 神経外科医スティーヴン・ストレンジは、どんなに難しい手術も音楽を聴きながら軽く片付けるほどの技量を誇る。しかし性格は実に傲慢で、周囲の評判はよろしくない。そんな彼がある日交通事故に遭い、両手の機能を失ってしまう。あらゆるリハビリを試すが、復帰は絶望的だ。



 偶然にネパールの奥地にどんなケガでも治してしまう秘密のスポットがあることを聞きつけた彼は、藁をもすがる気持ちで現地に赴く。ところがそこは謎の女導師エンシェント・ワンが仕切る魔術の修行場だった。その力を見せつけられたストレンジは魔術の習得に励むことになるが、エンシェント・ワンを裏切って世界征服を狙うカエシリウスの一派との戦いに巻き込まれていく。

 とにかく、筋書きがいい加減だ。不遜な態度を隠そうともしなかった主人公が、呆気なく“いい人”になってしまうばかりか、大した苦労もせずに敵のエージェント(?)と互角に渡り合う実力を身に着けてしまう。有力武器アイテムである“赤いマント”が、さしたる理由もなくストレンジの所有物に納まる。エンシェント・ワンが闇の力を借りている云々という意味不明の小ネタが、終盤での主要登場人物の裏切りに繋がっているという牽強付会な設定。

 さらには敵の首魁の造形が子供向けのテレビ番組にも劣るようなレベルの低さだったり、それに立ち向かうストレンジの“作戦”が脱力するほど稚拙だったりと、愉快ならざるモチーフがてんこ盛りだ。



 ならば映像面はどうかというと、これも評価できない。都市の風景がバラバラになり万華鏡のように変化する描写は確かに面白いが、何度も見せられると飽きる。魔術の繰り出し方も一本調子で芸がない。極めつけは「2001年宇宙の旅」のパクリみたいな“幻想的な映像”で、これを今の時点で得意満面でやってもらっても、観ている側は鼻白むばかりだ。

 主役を張るベネディクト・カンバーバッチをはじめ、マッツ・ミケルセンにティルダ・スウィントン、キウェテル・イジョフォーにレイチェル・マクアダムスなど、出ている面子は一線級である。だが困ったことに監督のスコット・デリクソンの腕は凡庸で、これらのキャストを使いこなせていない。製作サイドの“有名どころを並べれば客は来るだろう”という思惑が透けて見えるようだ。

 エンドクレジット後の“オマケ”の部分では、ストレンジがアベンジャーズのメンバーに関与することを匂わせるが、“だから何だよ”と言いたくなった。とにかく、マーベル・コミック系列の作品をすべてカバーしなければ気が済まないコアなファン以外には、奨められないシャシンである。

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